研究課題/領域番号 |
17K06383
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
岡田 浩 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30324495)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 窒化物半導体 / 集積回路 / イオン注入 |
研究実績の概要 |
化学的・機械的な安定性が優れワイドバンドギャップの窒化物半導体を用いたセンサやトランジスタをモノリシックに集積する技術が確立されれば、過酷環境でのセンシング技術に大きな貢献が期待できる。本研究では窒化物半導体上の集積回路の実現にむけ、作製技術の検討および素子の評価を進めた。 研究の2年目では、まず1点目として、イオン注入によるトランジスタの閾値調整技術について理論計算を交えた検討を進めた。GaNに対するドナー不純物となるSiをドーズ量10の11乗から13乗cm-2の中・低濃度で注入したGaN MOSダイオードを作製し、容量-電圧(C-V)特性による評価および理論計算を取り入れた解析を行なった。注入量に対する閾値電圧シフトの系統的な増加が得られたが、注入量に対する閾値電圧シフトの関係は単純な線形ではなく非線形的であると見積もられた。非線形性の要因解明にはイオン注入から活性化熱処理まで含めたプロセスの詳細な検討が必要であるが、GaN集積回路の実現にイオン注入技術による閾値調整が有用であることを見出した。 2点目として表面波プラズマを用いた原子支援化学気相堆積法による絶縁膜堆積技術を検討し、GaN上に形成したSiO2のMOSダイオード構造のC-V特性を評価し、理想曲線に極めて近い良好な特性が得られることを見出し、絶縁ゲート型トランジスタのゲート絶縁膜形成に有効であることを示した。この手法でAlGaN/GaNヘテロ構造を用いた絶縁ゲート型トランジスタを作製し、200℃においてもゲートリーク電流の小さい良好なトランジスタ特性を確認した。 3点目として、エンハンスメントおよびデプレッション特性のトランジスタをモノリシック集積したインバータ回路の作製と素子特性評価を行ない、研究計画の通り単体素子の検討から発展し、集積回路の検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究2年目に計画していた集積回路に実現に向けて行なってきた基礎データから、イオン注入条件や成膜条件、原子支援気相堆積による絶縁膜形成を応用したゲート構造の実現など、単体素子の検討で得た実験パラメータた設計条件をもとに、エンハンスメント/デプレッション型のMOSFETを組み合わせた集積回路として、インバータ回路の作製に発展している。絶縁ゲートトランジスタのゲート特性の指標である界面準位密度については、5x10の11乗 cm-2eV-1 を下回る特性が観測されており、目標が達成できてきている。過酷環境動作の検証として、200℃でのトランジスタ動作検証に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
集積回路の実現に必要な設計パラメータや作製条件、作製ノウハウの蓄積も進んでおり、今後、具体的な回路応用の実証実験を3年目に行う。耐環境性エレクトロニクスには、長期安定性や熱サイクルに対する検証も重要であり、高温下での特性評価など多角的な評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していた消耗品の一部を、助成金や共同研究を実施している研究者と合理的に共有することでき、最終年度の研究の展開に使用することが研究全体で高い成果が得られると判断されたため。
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