円筒状散乱体に貼り付け、散乱断面積をほぼゼロにするメタ表面の開発へ向けて、以下の方針で研究を進めた。1. 広い入射角度に対応するために、異方性と分 散性をより強く示す不定メタ表面を研究した。1a. 不定メタ表面の性質はまだ不明な点も多く、その動作特性についてより詳しい検討を加えた。1b. 得られた検 討結果を元にして不定メタ表面を吸収体として利用する際の性能向上を試みた。 1. 不定媒質メタ表面の臨界結合条件: 所望の入射角度で臨界結合状態を示す不定媒質メタ表面にを電磁界シミュレーションにより解析し、Q0 = Qex となる条件 を満足するよう、構造を最適化した。 2. 円柱状散乱体の散乱断面積シミュレーション: 設計された構造パラメータを用いて構成された分布型メタ表面を円柱状散乱体の表面に配置したときの散乱断 面積を電磁界シミュレーションにより評価した。市販の電磁界シミュレータでは解析時間が非現実的に長くなると予想されるため、新たに、時間領域有限差分法 によるシミュレーションプログラムを開発した。 3. 円柱状散乱体の散乱断面積測定: これまで設計した各セクションのメタ表面を組み合わせて円柱状散乱体の表面に配置し、その散乱断面積を評価した。各セ クションの構造を一枚のフレキシブル基板に構成した。 二つの V 帯ホーンアンテナを用いて、バイスタティックな散乱特性測定系を構築し、ミリ波帯での散乱 断面積を測定した。得られた結果を、手順 (6.) で計算した散乱断面積と比較することで、設計の妥当性を確認した。 これらの研究結果を、論文として まとめ、学術雑誌に投稿する予定である。
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