研究課題/領域番号 |
17K06389
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
竹澤 昌晃 九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (20312671)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 磁区 / 永久磁石 / 磁気光学 / 磁気Kerr効果 / 結晶組織 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ハイブリッド・電気自動車用駆動モーターでの使用を想定した「高耐熱磁石を希少資源(レアメタル)フリーで実現」することを最終目標として、磁石材料の高温下での減磁機構をミクロな観点から解明することができる、「バルク磁石材料対応の高速磁気イメージング装置」を構築することである。 30年度は、前年度に構築した高磁界励磁可能な高空間分解能・高速動磁区観察システムを用いて、磁性材料の磁区構造が高速で変化する画像を取り込み、磁性材料の減磁過程・磁区構造変化が材料の磁気特性に与える影響と、そのような磁化過程が起こる原因について、材料の組成、結晶方位等の結晶組織と付き合わせて考察を行った。さらに、交流磁界の掃引によって得られた磁区画像の動画から磁区コントラストの輝度値を読み取り、減磁曲線を構築する手法を確立して、任意の試料表面における、局所および試料全体の減磁曲線を測定した。 その結果、磁性材料の作製方法、粒子形状、粒子直径等に依存して減磁曲線は異なり、それは主として磁区の形状や寸法、磁壁ピンニングの頻度に依存することが明らかとなった。磁性材料の作製方法が減磁曲線に影響を与えるのは、作製時において付与された応力の残留によるものや、結晶粒径の違いによる結晶粒界の頻度によるものが考えられる。すなわち、残留応力による磁区構造への影響や、決勝粒界による磁壁ピンニングが磁区構造変化・磁壁移動に影響を与える様子が観察された。また、結晶方位が磁区構造に大きな影響を与えることも、磁区観察の結果と電子顕微鏡による方位測定(EBSP計測)の結果を付き合わせることで明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
30年度は当初の目的であった動磁区観察システムによる、実材料の交流磁界印加による磁区構造変化の様子を取得でき、その減磁過程を定量的かつ結晶組織との比較の観点で考察することを実現でき、研究は概ね順調に進展していると言える。ただし、動磁区システムの高速なトリガ制御についてはLED光源の光量不足により不十分な磁区画像しか得られない条件もあり、次年度のさらなるシステム改善が求められる。
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今後の研究の推進方策 |
31年度は、外部トリガ信号の制御により、動的磁区観察の時間分解能を向上させる手法について、取得される磁区画像を鮮明にできるよう、さらなる改善を目指す。このためのカメラの最適制御条件を明らかにして、磁石材料の磁区構造が高速で変化する瞬間の画像を高速に取り込むことができるようにする。また、構築した高磁界励磁可能な高空間分解能・高速動磁区観察システムを用いて、様々な種類の磁石試料の磁化過程の様子を磁区観察することで、「高保磁力発現のための結晶組織形成の指針」を把握する。また、電気自動車応用を想定した高温に試料温度を制御した場合の磁区観察も行い、「磁石材料の高耐熱性実現のための設計指針」を確立する。試料を高温に制御した場合の磁区観察には、これまでに申請者が構築してきた温度制御ステージによる手法などを念頭に種々検討する。これらについて得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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