研究課題/領域番号 |
17K06392
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
榎原 晃 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (10514383)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 電気光学変調器 / 非線形 / 3次相互変調歪み / 波長チャープ / ニオブ酸リチウム / ラットレース回路 |
研究実績の概要 |
マッハツェンダ型電気光学変調器(MZM)は高速で高品質な光変調が可能であるが、変調特性の非線形性に起因する歪みが発生し、特に3次相互変調歪み(IMD3)の抑圧は重要な課題である。本研究では、波長チャープ変調を行う2つのMZMを用いて光学的にIMD3を抑圧する新しい歪み補償法を提案し、その有効性を実証する。さらに、2つのMZMから構成されるデュアルパラレル型光変調器(DPMZM)と、変調信号を供給するための信号分配回路とを集積化した小型、単一チップ、単一入力構成の光変調器を実際に作製し、動作実証を行うところまでを本研究の目標とする。 29年度は、本提案の歪み補償法の動作解析と、実験による動作原理の実証を目標とし、有効な動作条件の導出と、汎用DPMZMを用いた実証実験を行った。実際に、IMD3の抑圧性能を定量的に解析し、2つのMZMのチャープパラメータを+0.5と-0.5に設定した場合が最も効果的であることを見いだし、この条件で、変調指数が0.25πrad以下の範囲で従来の変調器に対して20dB以上のIMD3抑圧できることがわかった。 次に、市販の汎用DPMZMを用い、1.55m帯の光源と10GHz帯の変調信号を用いて検証実験を行った。歪み観測のための2周波信号を各変調電極に印加するために個別部品からなる分配回路を作製し、出力光を光検出器で電気信号に変換して詳細に観測した。その結果、0.25πrad以下の変調指数の範囲で従来の変調器に対して20dB以上、最大で40dB以上の歪み抑圧性能を実測し、解析結果を検証できた。 さらに、研究計画を一部前倒しして、単一チップ構成の実現に向けたDPMZM光導波路を実際に設計し、試作を行った。また、電極と簡易な信号分配回路を形成して、実際に変調実験を行い、歪み抑圧動作を確認した。これにより、30年度計画達成への目処を立てることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
29年度は、本提案の歪み補償法の動作解析と、実験による動作原理の実証を当初目標としており、具体的には、1.歪み補償動作を詳細に解析し、実際のDPMZMを駆動する上で効果的な動作条件を導出することと、2.個別部品で構成した信号分配回路と汎用DPMZMを用いて解析結果を実験的に検証することである。 実際には、1.では、DPMZMの動作をショミュレーションできる解析プログラムを作成した。これを用いて、あらゆる動作条件において、出力光を光検出器で変換された信号のスペクトルを算出し、解析・検討した。その結果、上の「研究実績の概要」でも述べたように、2つのMZMのチャープパラメータを+0.5と-0.5付近に設定して動作させたときが、IMD3抑圧性能が最も良くなることが確認できた。 次に、2.の解析結果の実験的検証のために、市販のDPMZMを用いて上記の条件で動作させるための信号分配回路を外部の個別部品で作成した。そして、変調実験を行い、歪み補償動作を実験的にも確認することができ、解析結果の検証と動作原理の実証をすることができた。 これら結果より、20dB以上のIMD3抑圧性能が示され、非常に有効な歪み補償光変調器が期待できることが実証された。また、ここで導出した動作条件に基づいて、今後、変調器を設計・試作していくことができ、研究遂行における重要な設計指針が得られた。 さらに、研究計画を一部前倒しして、単一チップ構成の実現に向けてDPMZM光導波路を実際に設計・試作し、電極と簡易な信号分配回路を形成した。実際に変調実験を行い、歪み抑圧動作を確認したことにより、30年度計画達成への目処を立てることができた。このように、29年度当初目標は達成し、30年度計画を既に進めている状況であり、順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
30年度は、実用的な構造の歪み補償光変調器の実現の第1段階として、まずは、信号分配回路を小型で調整不要なプレーナ構造の一体化構成で作製する。また、DPMZMについても、市販のものを使うのではなく、実際に光導波路から設計・試作して、歪み補償動作実験を行うことを目標としている。これにより、個別部品で分配回路を構成する場合に比べて、回路の小型化と動作安定化が見込まれ、変調器の外に回路基板は必要とはなるが、分配回路の後調整は不要となり、また、単一入力で歪み補償動作をさせることが可能となる。 外部回路の具体的な回路構成は、ウィルキンソン分配回路で変調信号を2つに分け、それぞれを非等分配の並列リング型ラットレース回路で、位相差180°で異なる振幅の2つ信号にさらに分けて、DPMZMの4つの位相変調部に供給する。これにより、大きな電力分配比率の非等分配回路は設計が可能となり、2つのMZMをチャープパラメータが+0.5と-0.5で動作させることが可能となると予想している。 さらに、DPMZMについては、既に導波路設計と導波路の試作を29年度末から進めている。現状では、伝搬損失がやや大きいため、今後、特性を改善し、歪み補償光変調器に適用する予定である。このように、当初予定を前倒しして、進めており、30年度も予定よりも早く目標達成できる可能性があるので、その場合は、同様に31年度の計画を繰り上げて進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
順調に予算の執行ができ、物品購入や旅費に使用しにくい端数部分を繰り越すこととなった。
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