研究課題
マッハツェンダ型電気光学変調器(MZM)は高速で高品質な光変調が可能であるため、高速光通信システムに広く利用されている。しかし、変調特性の非線形性に起因する歪みが発生し、特に3次相互変調歪み(IMD3)の抑圧は重要な課題である。本研究では、波長チャープ変調を行う2つのMZMを用いて光学的にIMD3を抑圧する新しい歪み補償法を提案し、その有効性を実験的に実証することを目的としている。さらに、2つのMZMから構成されるデュアルパラレル型光変調器(DPMZM)と、変調信号を供給するための信号分配回路とを集積化した小型、単一チップ、単一入力構成の光変調器を実際に作製し、動作実証を行い、より実用性の高い光変調素子構成を実現するところまでを本研究の目標とする。29年度は、歪み補償動作の詳しい数値解析と、市販のDPMZMを用いた実験により、解析結果の検証と歪み補償動作原理の実証に成功した。30年度は、信号分配回路を回路基板上に作製すると共に、DPMZMを実際に光導波路から試作し、それらをケーブル接続して歪み補償変調動作を実証した。最終年度である令和1年度は、信号分配回路をDPMZM基板上に集積化した小型の光変調器を実際に作製し、動作実証を行った。最終の結果について、5mm幅のDPMZM基板上に、周波数10GHzで動作する180°ハイブリッド回路を変調電極と集積化に成功し、その構成を用いて、実際に光変調素子を試作した。そして、2周波信号を用いてIMD3の抑圧性能を実際に実験的に評価した。その結果、従来から利用されている通常のMZMに比べて,受信出力中のIMD3成分を20dB以上抑圧することができた.本変調器は、通常のMZMと同様に、単一チップ構成で、単一信号入力で動作可能であり、その有効性は大きいと思われる。
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