研究課題/領域番号 |
17K06395
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
礒田 隆聡 北九州市立大学, 国際環境工学部, 准教授 (70284544)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | MEMS / DNA / 素子 / 集積 / 並列計算 |
研究実績の概要 |
本研究では塩基配列の異なるDNAを16bit(約6.6×10^4ヶ)番地配列した集積電極を、精度の高い並列計算素子として機能させることを最終目標としている。そのためには実施期間中に①DNA/16bit集積電極の塩基配列を瞬時に電気信号で判別できるデバイス開発の要素技術の確立と、②DNA素子ならびにデバイスをMEMS技術で1チップに集約した並列計算素子の要素技術の確立が必要である。 そこで1年目は要素技術開発の第1ステージとして、DNA素子を高速にスキャンしてその塩基情報を読み取るための、測定器の開発と測定方法の要素技術開発を主に実施した。まずガラス基板上にDNA素子を集積させる番地を4.5bit(約25ヶ)配列した集積電極対を設計し、これを作製した。同時にこの25ヶの電極対の信号を連続的に切り替えて自動計測できるシリアル測定方式の計測デバイスの設計、ならびに作製を行った。評価の結果、本デバイスでは全ての番地の検出感度をスマートフォンによる通信で設定できた。測定信号はスマートフォンを介してデータ転送し、遠隔サーバーで自動解析できるシステムを完成した。 2年目は②のDNA集積技術の要素技術開発を中心に研究を実施した。DNAなどの生体高分子は取り扱いがセンシティブであるため、電極上に滴下するだけで吸着し、デバイス上で番地化できるよう、電極表面の素材や化学構造の最適化を実施した。尚、DNA断片は貴重であるため、本ステージでは吸着状態を評価するにあたり、酵素標識化タンパクをモデルとして、最適化の評価を進めた。その結果、幾つかの材料と、その調製法の最適化まで終了した。現状ではDNAの集積化方法については、高い再現性で実施できる目処が立った。一方で計測デバイスでの測定精度については未だ応答感度が低いため、DNA集積による素子の評価までは進めなかった。 3年目は素子の応答感度を高める方法を検討し、最終的にDNA素子の評価を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ガラス基板上にDNA素子を集積させる番地を4.5bit(約25ヶ)配列した集積電極対を設計し、これが作製できた。また研究代表者が以前出願した特許手法を活用して、この集積電極対へ様々な種類のタンパクを集積できるか確認を行った。ここでは抗体を代用して確認を行ったところ、設計した番地に活性を損なうことなく集積できることが確認された。 同時にこの25ヶの電極対の信号をシリアルに測定することのできる計測デバイスの設計、ならびに作製ができた。これも先の抗体集積化チップで、その状況をスキャンできることが確認された。 集積化数はまだ少ないものの、複数の番地上の信号を瞬時にスキャンできるDNAチップの作製方法、ならびに計測方法の要素技術が確立できた。このような理由で、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の報告ではDNA素子を集積させる番地数が4.5bit(約25ヶ)の集積電極の設計と作製までできたため、2年目はこの要素技術を展開して、集積化の電極対を1byte(256ヶ)まで増加させることを目標に、新たなチップの設計と作製を試みる予定であった。 しかし実際は4.5bitの集積段階で計測デバイスによる応答感度が低いことが判明したため、まずこの評価方法の確立を最優先にすることにした。この課題をクリアーした後に、集積度を 1byteまで上げることを試みる。
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