研究課題/領域番号 |
17K06400
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
松浦 達治 東京都市大学, 工学部, 講師 (60737609)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | A/D変換器 / 半導体集積回路 / 高精度 / 高速 |
研究実績の概要 |
「低電力AD変換器のディジタルアシストによる高精度化の研究」を継続している。(1) AD変換方式の研究では、2019年度は、いくつかのアーキテクチャの拡張を行った。 (2) また、LSI試作によるディジタル補正方式の試作実証については東京都市大学の傘先生との共同研究にて「β変換型AD変換器と逐次比較(SAR) AD変換器の2段構成AD変換器」の回路を65nm CMOSプロセスで0.7V電源にて設計し試作中である。
(1)のAD変換方式のアーキテクチャ拡張については東京理科大学・理工学部・兵庫先生の研究室とも共同研究を進め、いくつかのアイデアを得て学会発表を行った。 (a)インクリメンタル型(ΔΣ)A/D変換方式と、逐次比較A/D変換方式を組合わせ、16-bit高精度を実現しつつ変換時間が極端に長くならない方式の開発、 (b) (a)のインクリメンタル型をどのようなループフィルタで実現することが誤差の低減と変換速度の向上に有利かの研究、 (c)逐次比較A/D変換器にて、面積が大きくなる2進重みの容量アレイを使わず、単位容量Cだけを使い、C-Cラダーと言われる容量DACを作り、そのC-Cラダー中に発生するフローティングノードの寄生容量で変換誤差が発生するため、その影響をディジタルで補正するA/D変換方式の開発、を行った。
(2)の「β変換型AD変換器と逐次比較(SAR)AD変換器の2段構成AD変換器」の回路試作については、昨年度の東京都市大学の台風浸水被害等により試作時期を遅らせざるを得ず、本科研費の研究期間を1年延期していただいて、現在チップ試作中である。夏休み終了後に試作チップを得る予定で進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年までの概況で述べたように、β変換型A/D変換器のチップ試作による方式確認については、現在チップ試作中であり遅れている。 その状況は以下の通り。一昨年度試作したチップの評価によると、回路雑音が多く, 12-bit精度を目指していたが、実測では9-bit精度の雑音レベルにとどまっていた。 原因を解析したところ、リングアンプのリセット方式など回路熱雑音の検討が十分でなく、改良の余地があることが判明した。 そこで2019年度に改良設計を行い、回路設計、マスク設計を行っていたが、2019年秋の台風19号の影響により、東京都市大学が浸水被害にあったことなどから設計が遅延し、マスク投入を行えたのは2月になった。このため本科研費の研究期間を1年延期いただき、現在試作中である。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 新しいディジタルアシストA/D変換器アーキテクチャの研究では、概要で述べた(a),(b),(c)の方式が有効であることが分かってきた。特に(c)に関しては、ディジタル誤差補正の方式を研究し定式化し論文として投稿中である。またその拡張版のアイデアも得て、小面積で精度の劣化のない8~12-bit分解能程度の、超小型面積、超低電力A/D変換器として役立つことが期待できると考えている。
(2)β変換型A/D変換器のチップ試作による実証については、今後試作チップを得て詳細評価を行う予定である。半導体企業の方との共同研究も行っており、企業のエンジニアのご意見もうかがいながら、試作・評価を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
概要でも述べたように、β変換A/D変換器のLSIチップ試作に於いて、東京都市大学の2019年台風19号による浸水被害により設計が延期され、現在チップ試作を行っている段階である。
次年度2020年夏から秋にかけて試作チップが出来上がるため、その評価を行い、学会発表等の報告を行う予定である。科研費の残額はそれらのまとめの学会報告・発表などに使用する。
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