研究課題/領域番号 |
17K06403
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
高畑 清人 早稲田大学, 理工学術院(情報生産システム研究科・センター), 准教授 (40780797)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 光送信モジュール / 光デバイス |
研究実績の概要 |
本研究では、次々世代以降の高速光イーサネット、及び高速高密度光インタークネクションに共通して必要となる小型多チャンネル多値振幅変調光電気インターフェイスに適用する光送信モジュールを対象として、高速多値変調信号のチャネル間クロストークの影響に着目して、次の3つの課題に取組んでいる。課題(1)クロストーク抑制に適したモジュール構造の探求。課題(2)チャネル間隔とクロストークの相関の明確化。課題(3)クロストークペナルティの簡易な評価方法を確立。 以下、各々の課題について今年度の研究実績を記述する。 課題(1):高速光信号を生成する電界吸収型変調器集積DFBレーザ(EML)と変調電気信号を伝達するための高周波伝送線路基板との接続にハンダバンプを用いる構造について、昨年度三次元電磁界シミュレータ上に構築した実装構造モデルを用いて解析を行い、接続部構造(ハンダバンプのサイズ、位置等)についてクロストークを最小とするための条件を見出した。 課題(2):上記の三次元解析モデルを用い、モジュール小型化に向けてチャネル間隔を狭めた際に250μm以下になるとクロストークが急上昇することを確認した。また、光送信モジュール全体の特性解析のために電気の入力信号からEMLの光出力までを統合的に解析する光電気統合解析モデルをEML等価回路モデルを用いて構築し、信号伝送線路間だけではなく、EML間の基板を介したクロストークも含めた解析を行った。 課題(3)伝送信号の符号誤り率(BER)の劣化度合いを表す指標であるクロストークペナルティの評価について、信号雑音比(SNR)とクロストークペナルティの関係式を導出し、従来の評価方法(BER測定に基づく評価)の約半分の評価時間でクロストークペナルティが評価できる方法を見出した。NRZ信号に対してこの手法が有効であることを、伝送シミュレーションにより確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題(1)については、高周波信号線路の接続にハンダバンプを用いた構造について、隣接チャネル間クロストークと伝送損失の点で最適な接続部構造(ハンダバンプのサイズ、位置等)を三次元電磁界シミュレーションにより見出した。 課題(2)については、モジュール小型化に向けたチャネル間隔の狭小化は250μmまでは可能であるが、それ以下になるとクロストークが増大することを確認した。また、EML間の基板を介したクロストークも含めた解析を行った。 課題(3)については、SNRとクロストークペナルティの関係式を導出し、従来の約半分の評価時間でクロストークペナルティが評価できる方法を見出した。NRZ信号に対してこの手法が有効であることをシミュレーションにより確認した。
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今後の研究の推進方策 |
課題(1)クロストーク抑制に適したモジュール構造の探求、については、特にLSIチップ間光インタークネクションでは高密度化の要求が高いことから、チャネル間隔を100μm程度まで狭小化してもクロストークを抑圧できるモジュール構造の探索を行う。PAM4信号に対してクロストークを十分に抑圧できる構造を提案する。 課題(2):チャネル間隔とクロストークの相関の明確化、については、昨年度まではNRZ信号に対する解析に留まっているので、今年度はPAM4信号に拡張して両者の相関をシミュレーション解析により明確化する。 課題(3)クロストークペナルティの簡易な評価方法を確立、については、SNRに基づいたクロストークペナルティ評価手法をPAM4信号にも拡張するために必要な改良を加え、PAM4信号に対しても従来手法よりも簡易に、且つ短時間でクロストークペナルティを導出する手法を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
解析用パソコンの購入費用、及び人件費が当初計画よりも低く抑えられたことにより、次年度使用額が生じた。 この繰越額については平成31年度の助成金と合わせて、新たな解析ソフトウエアオプションの購入、及び国内外の学会出張費、参加費、論文投稿費、パソコン関連消耗品等に使用する計画である。
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