本研究では、次々世代以降の高速光イーサネット、及び高速高密度光インタークネクションに共通して必要となる小型多チャンネル多値振幅変調光電気インターフェイスに適用する光送信モジュールを対象として、高速多値変調信号のチャネル間クロストークの影響に着目して、次の3つの課題に取組んだ。課題(1)クロストーク抑制に適したモジュール構造の探求。課題(2)チャネル間隔とクロストークの相関の明確化。課題(3)クロストークペナルティの簡易な評価方法を確立。 以下、各々の課題について研究実績を記述する。 課題(1):高速光信号を生成する電界吸収型変調器集積DFBレーザ(EML)と変調電気信号を伝達するための線路基板との接続にはんだバンプを用いる構造について、三次元電磁界シミュレータ上に構築した構造モデルを用いて解析を行い、はんだバンプ径は大きい方が若干クロストークを抑制できるが、バンプ高さ・位置については検討の範囲ではほぼクロストークに影響を与えないことを確認した。 課題(2):上記の三次元解析モデルを用い、モジュール小型化に向けてチャネル間隔を狭めた際に250μm以下になるとクロストークが急上昇することを確認した。また、光送信モジュール全体の特性解析のために電気の入力信号からEMLの光出力までを統合的に解析する光電気統合解析モデルをEML等価回路モデルを用いて構築し、信号伝送線路間だけではなく、EML間の基板を介したクロストークも含めた解析を行った。 課題(3)伝送信号の符号誤り率(BER)の劣化度合いを表す指標であるクロストークペナルティの評価について、信号雑音比(SNR)とクロストークペナルティの関係式を導出し、従来の評価方法(BER測定に基づく評価)の約半分の評価時間でクロストークペナルティが評価できる方法を見出した。NRZ信号だけでなくPAM4信号に対してもこの手法が有効であることを、伝送シミュレーションにより確認した。
|