研究課題/領域番号 |
17K06409
|
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
永瀬 成範 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 主任研究員 (80399500)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 電子デバイス・機器 / 量子井戸 / トンネル現象 / 超高速情報処理 |
研究実績の概要 |
本研究では、窒化ガリウム系共鳴トンネルダイオード(GaN系RTD)でのサブバンド間遷移を用いることで、高速な不揮発メモリを実現することを目標としている。ピコ秒オーダーのサブバンド間遷移と共鳴トンネル現象を用いることで、他の不揮発メモリと比べて桁違いに高速な不揮発メモリを実現できる可能性を持っている。しかし、この不揮発メモリを実現するには、メモリ書き換え動作に対する耐性(エンデュランス特性)を改善する必要がある。そこで、本年度は、この不揮発メモリの安定動作化に向けて、GaN系RTD中の結晶欠陥密度がエンデュランス特性に及ぼす影響を調べた。GaN系RTD中の結晶欠陥密度とエンデュランス特性の相関を調べた結果、結晶欠陥密度の低い素子を用いることで、安定した書き換え動作を実現できる傾向があることがわかった。また、比較的結晶欠陥密度の低い素子を用いた場合には、15万サイクルを超える書き換え動作において、エラーフリー動作を実現できることも確認した。また、この書き換え動作後もメモリ特性の顕著な劣化や機械的な破壊は見られず、この不揮発メモリが高いエンデュランス特性を有する可能性を持つことがわかった。一方で、結晶欠陥密度の高い素子を用いた場合には、メモリ書き換え回数が増加するにつれて、メモリ特性が劣化する傾向があった。このメモリ特性の劣化は、GaN系RTDでの量子準位と欠陥準位の関係から、バリア層の欠陥準位を介した僅かな電子リークに伴ったバンド構造変化に起因するもので、機械的な破壊によるものではないということも明らかになってきた。また、結晶成長条件の最適化により、GaN系RTD中の結晶欠陥密度を低減する技術も確立されてきたことから、今後の更なる安定動作化を期待できる成果が得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
不揮発メモリのエンデュランス特性の劣化要因が明らかになってきており、また、GaN系RTD中の結晶欠陥密度を低減する技術も確立されてきたことから、ほぼ初年度の目標を達成できたと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
GaN系RTDの最適設計及び結晶品質の改善により、バリア層の欠陥準位を介した僅かな電子リークを抑制し、更なるメモリ安定動作化を目指す。また、これと並行して、素子微細化によるメモリ高密度化や高速パルスを用いた時間応答特性評価を行い、次世代不揮発メモリとしての可能性を明らかにしていくことを検討している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 研究開始時には、GaN系RTD中の結晶欠陥密度を低減するには、低欠陥GaN基板を用いる必要があると考えてきた。しかし、不揮発メモリのエンデュランス特性の劣化要因がわかってきたことや、結晶成長条件の最適化により、従来のサファイア基板を用いても結晶欠陥密度を低減することが可能になってきたことから、本年度予定していた、比較的高価な低欠陥GaN基板の購入や試料分析の依頼などを保留した。そのため、次年度使用額が生じた。 (使用計画) 次年度は、まず、これまで得られた成果をもとに、従来のサファイア基板によっても十分な安定動作化を実現できるかを調べる。もし、十分な安定動作化を実現できる場合には、業務効率の観点からも、低欠陥GaN基板の購入などを取りやめ、その分の予算は、メモリのエンデュランス特性や時間応答特性評価に有効な装置の購入に割り当てることを予定している。
|