研究課題/領域番号 |
17K06414
|
研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
宮嶋 照行 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (00261743)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 全二重中継伝送 / 自己干渉抑圧 / ブラインドアルゴリズム / 線形フィルタ |
研究実績の概要 |
本研究では,全二重無線中継伝送の性能劣化要因である自己干渉を抑圧する手法を開発する.特にパイロット信号を用いないブラインド干渉抑圧法を提案し,移動通信システムにおける周波数利用効率の向上を目指すものである.令和元年度は,(1)OFDM伝送のためのブラインド適応自己干渉抑圧アルゴリズム,(2)シングルキャリヤ伝送のためのブラインド適応自己干渉抑圧アルゴリズム,(3)マルチユーザシステムにおける自己干渉抑圧法,(4)無線電力伝送を行う全二重中継局について検討した. (1)では,前年度に引き続き,全ての通信路が未知であるOFDM伝送について,全二重中継局において線形適応フィルタにより自己干渉を抑圧する手法を検討した.優れたBER特性を有する適応アルゴリズムについて再検討し,送受信回路の不具合(周波数選択性IQインバランス,送信非線形アンプ)によらず干渉抑圧が可能であることをシミュレーションにより明らかにした.得られた成果を論文として投稿中である. (2)では,周波数利用効率に優れるCPを用いない伝送方式のための自己干渉抑圧手法を検討した.無歪分散最小化に基づくアルゴリズムの適用を検討した.シミュレーションにより,優れた干渉抑圧能力を有することを確認した. (3)では,全二重伝送を行う基地局によるマルチユーザシステムについて,自己干渉,残留符号間干渉,マルチユーザ干渉を基地局の線形フィルタにより抑圧する方式を考案し,その性能評価を行い,得られた成果を論文として投稿中である. (4)では,全二重伝送を行う中継局へ無線による情報伝送と電力伝送を同時に行う方式について,中継局における線形フィルタ設計を検討し,その性能評価を行い,得られた成果を論文として投稿中である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では,研究目的を達成するために,周波数利用効率に優れた自己干渉抑圧法を検討するが,現在までに当初予定していた,(1)ブラインド干渉抑圧法,(2)自己干渉,符号干渉,マルチユーザ干渉の同時抑圧,(3)送受信回路の不具合の影響評価,(4)無線電力伝送の利用の4点について,すでに結果が得られており,(4)については一通の論文の掲載が決定している.また,(1)と(3)の成果をまとめた論文,(2)の成果をまとめた論文,(4)の一部をまとめた論文の3通を投稿中である.さらに,(1)について新たな方法を検討している.これは申請時の計画になかったものであるが関連するトピックである.
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度は,投稿中の論文について,査読結果への回答や再投稿といった対応を行う.また新たな方式についても検討を続け,その成果について国内学会で発表する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画のうち実験等は既に実施され,全二重中継伝送における干渉抑圧についての十分な知見が得られた.本研究成果をより広く発信するため論文として投稿したが,査読結果をまだ受け取っていない状況から,次年度使用が生じた.すでに採録が決定した論文1通の他,3通の論文を投稿中であり,それらの掲載料として次年度に使用する計画である.
|