研究課題/領域番号 |
17K06416
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
有馬 卓司 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20361743)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | メタマテリアル / 負の透磁率 / 電磁界解析 |
研究実績の概要 |
本研究は,マイクロ波領域において比透磁率が0に限りなく近くなる構造(Mu Nealy Zero:MNZ)の実用化を目的とする.そのために,MNZを応用するための原理を解明し,アンテナの小形化・高性能化,またこれまでに無かった新しい電波吸収構造の開発などを行う. 研究初年度の平成29年度は,比透磁率が0付近の構造の応用原理の解明に主眼大き,シミュレーションを中心に行い下記2点の成果を得た.①高速かつ高精度なシミュレーション手法の確立:本研究ではシミュレーション手法としてFDTD法を用いる.この手法は複雑なモデルを容易に計算できる一方,計算に非常に長い時間が必要となる.そこで我々は,計算領域を分けて効率的に解析する手法を開発しその有効性を確認した.開発した手法はメタマテリアルのような複雑な構造の電磁界を計算しその周辺の等価電磁界を計算する.そして計算した等価電磁界をアンテナなどの構造付近で再構成するものである.さらにこの際,アンテナからの反射電磁界を戻すものである.これにより複雑な電磁界の反応をシミュレーションすることが可能になった.②広帯域な負の透磁率を示す構造の開発:本研究では比透磁率が0に限りなく近くなる構造の実用化を目的としている.この現象は,透磁率が負から正に反転する際に0付近の透磁率を示す現象を利用している.そのため,広帯域な負の透磁率を示す構造が必要となる.本研究では,これまで負の透磁率を示す構造と知られているSRRと呼ばれるリング状の構造があるが,この構造を変形することでこれまでの構造に比べて大幅に広帯域化できることを示した.これにより広帯域に0付近の当時率を示すことがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ここでは,本研究が順調に進んでいる事を客観的に示す.本研究では平成29年度について下記3点を遂行する予定であった.①比透磁率が0に限りなく近くなる構造構造中の電磁波の振舞解明,②比透磁率が0に限りなく近くなる構造構造とアンテナ相互作用,③これらの実験を含む検証. ①については,FDTD法を用いたシミュレーションによりその特性を明らかにした.特に我々が開発を行ったFDTD法においては解析領域を分けることで高速に解析できるものであった.この手法を活用して比透磁率が0に限りなく近くなる構造構造中の電磁界の解析を行った結果,特異な振る舞いをしていることが明らかになった.特に構造の中で非常に強い電界が観測された.②については,こちらもシミュレーションにより明らかにした.特にアンテナについては励振点があるために,通常の周期構造モデルを使用することができない.そこで我々が開発したFDTD法においては領域をメタマテリアルの部分とアンテナの部分に分けるものであった.この手法を用いてメタマテリアルとアンテナの相互作用を調べた.その結果,アンテナと構造を5mmほど近づけてもアンテナンとしての特性は劣化しないことがわかった.また,アンテナと構造を5mmくらまいまで近づけると共振が起きることがわかった.そのため,特定の周波数でアンテナの特性が劣化することがわかった.③については申請者らが開発している実験装置を用いて特性の基礎的な解析を行った.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の成果をまとめると,①比透磁率が0に限りなく近くなる構造構造中の電磁波の振舞解明を行った.②比透磁率が0に限りなく近くなる構造構造とアンテナ相互作用を解明した.③これらの実験を含む検証を行った,の3点となる. 上記について順調に研究が進んでいることから平成30年以降は下記について検討を進める.まず,アンテナへの応用については,これまでと同様に,FDTD法を用いたシミュレーションを積極的に行いその特性を明らかにしていく予定である.特に我々が開発を行ったFDTD法が有用であることが明らかになったので活用する.この手法を活用してアンテナが近傍に配置された際の比透磁率が0に限りなく近くなる構造中の電磁界の解析う.この解析においては大規模な計算となることから,大型計算機(有料)を活用する.これまでの検討より構造中で強い電界が観測されていることからこの現象についても解析を行う.そして,この構造を用いた応用例については,こちらもシミュレーションを中心に行い明らかにしていく予定である.特にアンテナについては給電点があるために,給電点近傍での電磁界の振る舞いを解明することにより応用方法を明らかにする.さらに我々が開発している測定装置の特性向上を目指して,シミュレーションにより測定装置の特性を解析することで効率よく測定装置の改良を行う.さらに実際に構造をこの装置を用いて特性の応用的な特性を明らかにする.さらには得られた成果を積極的に発表する予定である.
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