令和元年度は、送信者が二人、受信者が一人である多重アクセス通信路における送受信間の乱数の共有と受信者による独立乱数の同時生成問題を考察し、次の研究成果を得た。 1)必ずしも定常性やエルゴード性を持たない一般多重アクセス通信路において、二人の送信者の情報(乱数)を受信者が任意に小さい誤り率で復号するとともに、二人の送信者の送信情報とは統計的に独立な乱数を通信路の出力列から受信者が生成する問題を取り上げ、二人の送信者の情報伝送レートと乱数生成レートの限界領域(達成可能領域)を明らかにした。また通信路の入力分布を固定した場合、2つの情報伝送レートと乱数生成レートの間にはトレードオフ関係が存在しないことを示すとともに、通信路の入力分布を取り替えることによって、トレードオフが生じることを明らかにした。更に、片方の送信者が情報を送らない場合、一般通信路において求めた達成可能領域が導かれることを明らかにした。 2)定常無記憶多重アクセス通信路、加法的雑音を有する多重アクセス通信路ならびに混合多重アクセス通信路に対して、具体的な達成可能領域を求めた。定常無記憶多重アクセス通信路においては、通信路出力のエントロピーが入出力間の相互エントロピーと乱数生成レートの和に等しいことを示した。また、加法的雑音を有する多重アクセス通信路においては、最大の乱数生成レートが雑音のエントロピーレート下限に一致することを示した。更に、混合多重アクセス通信路においては、情報伝送レートの上限が悪い方の多重アクセス通信路によって定まり、乱数生成レートの上限が良い方の多重アクセス通信路によって定まることを明らかにした。
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