多値変調光信号伝送の長距離化を目的として、高速アナログ-デジタル変換や大規模のデジタル信号処理に頼らないコヒーレント光信号再生中継の研究を行なった。提案する中継方式における主要な構成要素は、光電気変換型ホモダイン信号再生器と光電気変換型イントラダイン位相共役器である。前者においては、キャリア成分をもたない位相変調光信号からの位相同期局部発振光生成を安定に行うことが、後者においては、帯域幅が限られた光電気変換型位相共役器の動作を検証することが重要である。また、波長分割多重伝送におけるチャネル間非線形相互作用を補償するための位相共役実施前後での波長順変換の最適化も課題となる。 最終年度では、ホモダイン信号再生における位相同期局部発振光生成の実験を狭線幅レーザ光源を用いて四位相偏移変調(QPSK)信号に対して行うとともに、光電気変換型イントラダイン位相共役器の入力光偏波依存性を低減するための方法を検討した。 補助事業期間全体を通じた研究成果は以下の通りである。 1.コヒーレント 信号再生における位相同期局部発振光生成の方法として、仮に読み取ったデータによって受信光信号を変調してデータを消去し、キャリア成分を回復させたのちに注入同期半導体レーザに入力し連続光を生成する手法を提案し、その特性を明らかにした。 2.光電気変換型位相共役器の動作実験を行い、伝送速度10GbpsのRZ型信号の位相共役においては信号光と局部発振光の周波数差が15GHz 程度まで許容されることを明らかにした。また、伝送ファイバの分散および非線形性による信号劣化補償を実証した。 3.伝送路中点における位相共役によって波長分割多重伝送におけるチャネル間非線形相互作用を補償する場合、分散マネージ伝送系では、位相共役後に波長順を変換しないほうが劣化補償効果が大きく、電気光変換型位相共役が有効であることを示した。
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