アンテナをクロスループ構造(クロスループアンテナ)とすることでもたらされる物理的効果と、そのメカニズム、そして効果的な応用に関する研究を行った。クロスループ構造がアンテナの小型化及び円偏波アンテナの実現に有効であることを研究代表者は発見した。本課題ではまず、折り返しループアンテナとクロスループアンテナのインピーダンス特性、電磁界及び電流分布、そして、位相の周波数特性を比較検討した。その結果、クロスループ構造とすることで、従来の折り返しループアンテナにリアクタンス成分が加わり、特定の周波数範囲においては等価的に左手系線路となり、零位相分散特性と同等の電流分布がアンテナエレメント上に流れることが分かった。また、クロスループ構造とすることで、折り返しループアンテナでは放射に寄与しないモードの利用が可能となり、その結果、クロスループアンテナは、折り返しループアンテナと同等の直線偏波の放射と、従来は放射に寄与しなかったモードを利用した円偏波の放射が共存できることを明らかにした。効果的な応用として、零位相となる周波数前後においてアンテナの偏波特性が、直線->右旋円偏波->左旋円偏波->直線偏波となる多周波多偏波アンテナ、150MHzから2GHzまでの幅広い帯域の複数の周波数で所望の旋回方向の円偏波や直線偏波をもつ多周波多偏波アンテナ、そして、第5世代移動通信システム(5G)用の28GHzで円偏波を所望方向に傾けて放射出来るアンテナの設計に成功した。5G用アンテナについては、携帯端末内蔵用のアンテナ設計にも成功し、携帯機器の筐体や周辺回路の影響を受けにくいアンテナ構造、配置方法、給電方法を提案した。これらの結果については、全て、実証実験によりその性能や特性を確認した。
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