研究実績の概要 |
携帯電話のサービスエリアを空間的に構成する3次元セル構成では、異なるビル内にある基地局間の干渉量の推定が必要である。このため本研究では屋内から屋内への伝搬損失の推定法の確立を目的にしている。これまでに150MHz, 440MHz, 1.2GHz, 5.8GHzの建物侵入損失の周波数特性を明らかにしてきた。この検討で150MHzや440MHzの低い周波数では窓から室内に入るに従って損失が増えることがわかっている。この原因について平成30年度は検討を行った。 低い周波数で損失が増える原因を調べるために室内の配置物(机や椅子)の影響を調べた。150MHzと440MHzを用いて窓からの距離を4m~14mまで変えて、机や椅子が有る場合と無い場合の侵入損失を測定した。この結果、机や椅子の有無による差は見られず、机や椅子は原因ではないことがわかった。 実際の部屋では原因がわからないため、部屋の環境を変えられるスケールモデル実験を行った。コンクリートブロックを用いて1/30の縮尺の室内を作成した。室内は空洞であり、窓枠や天井、床、側壁から構成される。これにより天井や床などが有る場合と無い場合を比較することで、これらの影響を調べることができる。実験では5.8GHzを用いたので、得られる損失は1/30の193MHzに相当する。1/30の部屋では実環境と同程度の結果が得られ、スケールモデルで実環境を再現できることがわかった。また、窓枠だけの場合は物理光学近似の計算結果と合うことを確認した。しかし、窓枠と床だけの場合は窓枠だけと同じ結果になり、床の影響がみられなかった。床や天井、側壁の反射波の影響を取り除くために、複数の窓枠を並べただけの環境を作って測定したが、1枚の窓枠だけの結果と同じになった。このように、スケールモデル実験を行ったが、低い周波数で損失が増える原因を明らかにするには至らなかった。
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