研究課題/領域番号 |
17K06434
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
杉山 久佳 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (20264799)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | スマートグリッド / インターネットオブエナジー / スマートエネルギー / パルス化配電ネットワーク / 分散型電源 |
研究実績の概要 |
(1) パルス化配電ネットワークの運用において予想される問題点のひとつである電波雑音の発生について検討を行った.前年度では従来の正弦波状電力伝送の基本周波数付近での電波雑音の評価を行ったが,今年度は,より高い周波数領域(LF)での電波雑音の数値解析を行った.解析の結果,標準電波信号などに使用されている40[KHz]付近でのパルス化配電の影響は,バイアス化余弦波を用いた場合はその影響が基準値を下回ることがわかった. (2) パルス化配電ネットワークの新たな運用方式として「ポテンシャル勾配法」を提案した同方式によれば,パルス化配電ネットワークのシステム拡張性が実現する.ポテンシャル勾配法では,各ノードが「ポテンシャル勾配テーブル」を個別に所有し,隣接ノードとの情報交換に基づいて繰り返し更新する.ポテンシャル勾配テーブルは,各送電者が次の同期フレームにおいて送電量を増大する対象受電者(ターゲット)を表示する.ターゲットは,ポテンシャル勾配値(受電者の電力需要と送電距離の比率)が最小となる受電者および送電経路が常に選択される.本方式の動作をシミュレーションによって確認した. (3) 前記のポテンシャル勾配法に基づいて作動するパルス化配電ネットワークのデモンストレーションを行う展示装置を開発した.同展示装置は2基の分散型電源,4軒の受電者,8基の電力ルータ,およびこれらを制御するコンピュータからなる.コンピュータのモニタ画面には,全ノードのポテンシャル勾配テーブルがリアルタイムに表示される.電力ルータは最大5点の外部端子および同数の電力スイッチを備える.本装置は,国際会議 IEEE GCCE(奈良)において発表し,同会議の優秀展示賞(Excellent Demo Award 2nd Prize)を受賞した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記したように,以下3点の成果が得られたことが理由である. (1) パルス化配電ネットワークの運用において予想される問題点のひとつである電波雑音の発生について検討し,特にバイアス化余弦波を使用すれば実際に電波サービスが行われてているLF帯域においても電波雑音の問題は生じないことの見通しを得た. (2) パルス化配電ネットワークにおいてシステム拡張性を実現する新たな方式「ポテンシャル勾配法」を提案し,シミュレーションによる検証を行った. (3) ポテンシャル勾配法に基づくパルス化配電ネットワークのデモンストレーションを可能とする展示装置を開発し,その展示内容が国際会議において優秀展示賞を獲得した.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究課題は以下の3点である. (1) パルス化配電ネットワークにおいて各受電者が備えることを想定している蓄電平滑回路の設計と動作解析. (2) パルス化送電時に発生する電磁ノイズを低減するバイアス化余弦波を生成するパルス発生回路の設計. (3) パルス化配電ネットワークの動作を検証するミニチュアモデルにおいて,各ノードごとの分散制御を実証するプロセッサと通信モジュールの実装.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)今年度使用額を見直してみると,主として物品費の使用額が見込み額に対して低い.これは,新たに提案した方式を実証するデモ装置が,前年度に作成した装置を流用できことが理由である. (使用計画)上記デモ装置の大幅な更新を予定している.内容は,各電力ルータにプロセッサと通信モジュールを設置し,これに関連するモニタ装置などに予算を使用する予定である.
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