研究課題/領域番号 |
17K06436
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
高橋 賢 広島市立大学, 情報科学研究科, 准教授 (60359106)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 地上ディジタルテレビ / ISDB-T / 緊急警報放送 / 低消費電力受信 / パリティ |
研究実績の概要 |
日本で2003年12月に運用を開始した地上ディジタルテレビISDB-Tには、緊急時に放送局から送出される特別な起動信号により、テレビ受信機を自動的にオンにしてニュースチャネルに切り替える機能が用意されている。その自動起動機能の移動テレビ受信機への実現には、受信ビット誤りによる誤起動と、それによる消費電力増加の課題があった。その課題を解決するために、本年度では次の研究を実施した。 1.自動起動信号検知により受信機を直ちに起動すると、直接的に受信誤りの影響を受ける。一方、一定時間の信号観測による累積検知には起動信号送出からその検知までの遅延が生じる。その一定時間の信号観測には、そのしきい値と累積時間との2パラメータを決めなければならない。誤って受信機を起動する確率と、誤って受信機を起動しない確率から、信号受信により受信機が得る情報量を解析的に求め、その最適パラメータを明らかにした。一方、起動信号検出方法の従来法には受信機を長時間休眠できる利点があり、提案法には誤起動を大幅に削減できる利点がある。この両者に累積信号検知を適用する際の最適パラメータの相違から、累積信号検知により両者の特長を融合する新しい起動信号判定方法を考案した。 2. 起動信号の判定実験を再現するためのソフトウェアによる受信機の記述を行なった。ソフトウェア改版などの影響を少なくしながら、受信機をより効率よく動作させるために、コンテナを用いた。また、受信機の電池容量を活用するために、リチウムイオン電池の充放電ICと残容量推定ICの実験を行なった。 3. 低消費電力での起動信号判定の方法を応用して、測位衛星「みちびき」から放送される緊急信号の低消費電力受信方法を検討した。この緊急信号を受信するためには、まず測位信号を受信しなければならないことから、リアルタイムキネマティックや精密単独測位による高精度測位信号受信を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、1. 緊急警報放送信号を低い誤り率かつ低消費電力にて待機受信できる方法、2. 多数の制御情報サブキャリヤを分離合成できるベースバンド変換方法、3. 復号方法とベースバンド変換方法を協調動作させて低消費電力かつ確実に動作する受信機構成方法、を扱っている。 当該年度は項目3.を中心に研究を実施した。具体的には、(1) 累積時間検知の定性的特性解析、その受信信号強度に対する相互情報量の導出、および従来の単一ビット検出方法と提案するパリティ検出方法とを組み合わせた新しい起動信号判定方法を提案し、(2) ハードウェア実現方法を検討して、(3) 本研究課題の人工衛星からの緊急信号受信への応用を見出した。当該年度において、レター論文2件と、研究会・全国大会発表6件の成果を得た。 しかしながら、研究代表者は受信状態の推定に対する課題を認識している。当初計画では、当該年度が研究最終年度ではあった。研究を精緻に達成するために1年間の補助事業延長申請を行い、ご承認いただいた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題を通して提案したパリティ検出方法にはビット誤りを推定できる見込みを得ている。この特長を利用して、起動信号を低消費電力受信する具体的方法を明らかにして、ジャーナル論文掲載を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究課題のうち、受信状態推定の課題が達成できずに次年度使用が生じた。研究課題精緻な達成によるジャーナル論文掲載を目指すために、次年度使用を行う予定である。
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