日本をはじめ多くの国々で実用化されているISDB-Tディジタルテレビ方式において、放送局は緊急時に特別な信号を放送することによりテレビ受信機を自動起動できる仕組みがある。この不規則に放送される緊急自動起動信号を低消費電力かつ高信頼にキャッチする受信方法を研究してきた。前年度までに助成いただいた事業を通して、電波受信状態を推定し、2つの受信方法を切り替える方法を提案した。ここで課題となる電波受信状態推定を達成するために、助成期間の延長をご承認いただいた。本最終年度に得た結論は次の通りである。 1. あらかじめ決定したビット列と受信ビット列との比較を行い、その不一致ビット数から電波受信状態を推定することを提案した。緊急自動起動信号は約0.2秒ごとに伝送される可能性がある。そこで、過去5回の信号判定結果を保持しその判定結果を用いて、平均消費電力軽減を目指す方法と、起動信号の精密判定を目指す方法とを切り替える新しい方法を提案した。すなわち、自動起動に必要な時間が0.2秒から約1秒に増加する代償があるものの、信号検出の低消費電力化と高信頼化との両立を目指した。この切り替え方法を用いたときの消費電力削減効果を解析して、自動車などにて自動起動信号を待機受信する代表例においては消費電力を約1/5にできることを示した。 2. 提案する信号検出方法をソフトウェア無線機HackRFと小さなマイコンにて実現することを検討した。ソフトウェアライブラリの理解に時間を要して、現在までに実現には至ってはいないもの、無線電波を用いる他の緊急信号検出への適用の見込みを得た。 これらの成果から、当初の研究目的をほぼ達成できたと自己評価している。これまでの多くの研究成果を挙げることができたのは、本助成制度のおかげであり、心より感謝申し上げる。
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