研究課題/領域番号 |
17K06438
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
石田 賢治 広島市立大学, 情報科学研究科, 教授 (70221025)
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研究分担者 |
小畑 博靖 広島市立大学, 情報科学研究科, 准教授 (30364110)
高野 知佐 広島市立大学, 情報科学研究科, 教授 (60509058)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | プロトコル / アシュアランス性 / 無線マルチホップネットワーク |
研究実績の概要 |
異種でかつ変化する要求に対するディペンダビリティ、セキュリティ、適時性、適応性を満たす性質はアシュアランス性と定義される。このアシュアランス性をもつネットワーク制御技術は、異種でかつ変化する想定外の事象への対応能力を持つ。アシュアランス性を持つ無線マルチホップネットワークについて、アシュアランス性を考慮した制約条件をもつ問題を考察し、新たな離散構造を利用した解法を引続き検討した。また、提案方式を適用および評価するモデルの枠組みに関して検討した。 令和3年度は、以下の成果を得た。無線マルチホップ通信を用いた緊急災害時の情報収集のための技術が検討されている。しかし、無線マルチホップ通信では、データを様々な無線通信メディアを利用して複数の中継機器を経由して宛先端末まで転送するため、データの衝突などの通信品質に関する問題が発生する。これまでに、端末数の増加に伴うデータフレームの衝突回避を一種の同期制御により可能とする、適時性の高いメディアアクセス制御としてSP-MACが提案されているが、無線マルチホップ環境には対応していない、そこで、無線マルチホップ環境に対応可能な制御として、クラスタリング等で複数の同期範囲を適応的に設定可能な、SP-MACに基づくメディアアクセス制御を提案し、その性能を評価した。シミュレーション実験の結果、提案方式は端末が密な環境においてパケットの衝突を回避し、既存の方式よりも高い合計スループットを獲得できることを確認した。得られた成果の一部を電子情報通信学会の研究会などで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、異種でかつ変化する想定外の事象への対応能力を持つ、アシュアランス性を情報ネットワークの制御に導入することを目指している。 令和3年度は、アシュアランス性を持つ無線マルチホップネットワークの無線ノードのスループットのモデルやデータフレームの衝突回避を一種の同期制御により可能としている、適時性の高いメディアアクセス制御であるSP-MACを拡張し、無線マルチホップ環境へ対応させる検討を行った。具体的には、無線マルチホップ環境に対応可能な制御として、クラスタリング等で複数の同期範囲を適応的に設定可能な、SP-MACに基づくメディアアクセス制御を提案し、その性能を評価した。シミュレーション実験の結果、提案方式は端末が密な環境においてパケットの衝突を回避し、既存の方式よりも高い合計スループットを獲得できることを確認した。 令和元年度から、大学の運営管理業務に以前と比べてかなり多くの時間を割くことになった。加えて、本年度も引き続き、大学運営において新型コロナウイルス感染症対応に、多くの時間を割く必要があった。そのため、当該研究テーマに費やすために予定していた時間が十分に取れず、解法の改善や評価の一部を次年度に行いたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)令和3年度までに検討した問題の定式化・解法の改良およびネットワークシミュレータへの組込み:前年度までに得られた知見を基に、問題の定式化や解法の改良、および、ネットワークシミュレータへの組込みを引続き行う。新たな離散構造技術の応用・ 展開例として、当該離散構造の研究グループにより、種々のソフトウェアなどの成果物が公開されている。問題の定式化の改善や解法の改良、ネットワークシミュレータへの組込み、および、性能評価の際には、このような公開されている成果物を参考にする。 (2)令和3年度までの実験結果に基づく評価および適用モデルの構築と評価モデルに基づく評価:キャプチャ効果、および、マルチレート技術を導入している無線ノード間でのスループットの実験的、および、シミュレーション評価を行い種々のデータを得ている。検討中の課題はかなり複雑であり、実際の端末を用いた全て実環境での評価は困難な見通しのため、主にネットワークシミュレータを用いて評価を行う予定である。 (3)今後に備えたまとめを実施する。さらに、得られた成果を電子情報通信学会などの研究会や論文誌、および、IEEEの国際会議などへ投稿を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度は、引続き大学の運営管理業務に以前と比べてかなり多くの時間を割くことになった。加えて、新型コロナウイルス感染症対応に、極めて多くの時間を割く必要があった。そのため、当該研究テーマに費やすために予定していた時間が十分に取れず、研究費の残額がかなり発生した。次年度は、検討中の技術の有効性の評価に向けての考察が必要であるため、残額の研究費を効率的に利用する予定である。また、 得られた成果を研究会等で発表するための旅費、および、論文別刷り代として利用する予定である。
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