研究課題/領域番号 |
17K06439
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
池原 雅章 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (00212796)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 位相限定相関 / 位置姿勢推定 / 位相差 |
研究実績の概要 |
まず単純な問題として2つの対象が並行移動しているものとし、その移動量を求める。2つの対象の離散フー リエ変換を求め、その正規化相互パワースペクトルを求めると、位相回転項が得られるから、これを逆離散フー リエ変換して得られた数列を位相限定相関関数(POC)と呼び、そのピーク点が移動量に相当する。これによって整数精度の移動量が得られる。サブピクセル精度の移動量を求めるために、従来法ではsinc関数に似た理想関数を求め、POCに関数フィッティングして、その関数のピークを求めることにより、サブピクセル精度の移動量を推定して いた。しかし対象に雑音が付加されたり、類似性が低い場合にはフィッティングそのものが困難となり、さらに フィッティングさせるために繰り返し計算が必要になり計算量は増大する。またその推定精度は一般に高くはな い。 本研究課題では、正規化相互パワースペクトルが位相回転項に相当する複素数であるから、ここで直接位相を 算出する。ただし位相を単純に計算すると不連続性が生じ、その傾きを求めることができない。これが2次元に なるとさらに複雑になり、連続にするためにアンラップという操作が必要になるが、これだけで研究テーマにな る程困難な問題である。これを解決するために、POCから整数精度の移動量は得られるから、これに相当する位 相回転項あらかじめから除算し、少数部分の位相回転項だけから位相を算出する。少数部分の位相は連続関数と なり、煩雑なアンラップも不要になる。結局得られた位相は理想的には周波数に対して線形となるから、単純な 最小自乗法を使って移動量が求まる。この際雑音や非類似性によって線型性が崩れる可能性があるが、重要な周 波数領域に重みをかけたり、外れ値を除くことによってロバストで高精度な移動量推定が可能になる。簡単な試 算によるとPOCに比べ、一桁以上高い精度の推定が可能になる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定通り、対象の平行移動に関して移動量の産出を行った。2つの対象の位相限定相関関数から、逆フーリエ変換を適用し、整数精度の移動量を算出する。これを位相限定相関関数から減算し、少数部分の位相回転項だけから位相を算出する。この際すでに整数の位相は減算されているため、位相のアンラップは不要となり、2次元の平面的な位相が計算できる。この2次元位相から、2つの軸上の位相を算出し、最小二乗法を適用して傾きを求め、すでに求めた整数移動量と合算して、全体の移動量を求めることができた。この際高周波成分は誤差の影響を受けるため、低周波領域に限定して傾きを求めることにより、よりロバストな推定が可能となった。 得られた結果を関数フィッチングによる従来法と比較すると、一桁以上の大幅な精度向上が見られた。これらの結果はすでに電子情報通信学会論文誌に掲載されている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は回転・スケール変換を含む姿勢推定を行う。従来POCの改良版としてLog-Polar変換を用いて、回転及びスケ ールの推定を可能にした回転不変位相限定相関(RIPOC)が提案されている。しかしLog-Polar変換はサンプリング に粗密が生じ、この時点で誤差が生じる。従って回転・スケール量にも誤差が生じ、高精度な姿勢推定は不可能 である。そこで均一なサンプリングを行うことができ、トモグラフィーで用いられているラドン変換を適用する 。 ラドン変換は回転角に対して周期的であり、同一の対象が回転すると、そのラドン変換は、回転量分だけ水平 にシフトする。従って原理的にはの横軸に対して、1次元の提案法を適用すれば、高精度な回転量推定が可能に なると考えられる。次にこの回転量を補正すると、縦軸に関する相似画像が得られるから、その比がスケールに 相当する。このようにラドン変換を用いることにより、よりロバストで高精度な姿勢推定が可能となる。 最終的な目標はが任意のアフィン変換を求めることである。行列を分解すると複数の回転、スケール、スキュ ーの積で表現できる。回転・スケールについてはこれまでの方法で推定でき、スキューについて効果的な推定法 を検討する。結局変換の推定・補正を繰り返すことにより、これまで世界的にも知られていなかった、アフィン 変換による姿勢推定が可能になり、画期的な成果が得られるものと期待する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は予定していた国際会議に参加できず、余剰金が生じたが、今年度は研究成果をさらにPRするためにトップコンファレンスを中心に国際的に発表していく予定である。
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