研究課題/領域番号 |
17K06441
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
三好 匠 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (40318861)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ネットワーク / P2P / 位置依存型 / 位置情報サービス / 国際共同研究 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,ユーザの周辺にある端末とグループを構成して通信を行う位置依存型通信の実現に向けて,既存の通信デバイスのみを用いた位置依存型P2Pネットワークの研究と開発を行っている.2年目である2018年度は,位置依存型P2P通信を実現するためのP2P通信基盤の研究開発(研究課題1),適応的で柔軟な位置依存型P2P通信方式とパラメータ設定手法の検討(研究課題2),スマートフォンを用いた位置依存型通信システムの開発と検証(研究課題3)を実施した. 研究課題1では,昨年度は既存クラウドサービスの利用を前提として位置依存型P2P通信方式を提案していたが,通信遅延などの課題が見つかったため既存サービスを併用しないですべての接続処理を実現する手法を考案した.提案システムをAndroid端末上に実装し評価実験を行ったところ,端末間通信遅延が100ms以下となり,以前の半分以下,クライアントサーバ型の1/3以下となることが分かった. 研究課題2では,具体的なユースケースを複数想定してパラメータ設定手法の検討を実施した.具体的には,(1)歩行者・車両間での事故防止を想定した位置依存型ネットワークの構築,(2)近隣端末と協調してファイルダウンロードを行うための近隣端末検索方式の検討,(3)位置情報に基づいた大規模情報配信を実現するための通信方式の検討を実施した.特に(1)では,歩行者や車両の移動速度の違いに基づいて周辺端末との接続範囲を変更する適応的なパラメータ制御手法について検討し,高速移動する車両を遠方から察知することが可能となった. 研究課題3では,上述のとおり通信方式の変更を行ったことから,昨年度の実装を変更した.実装は順調であり,研究課題1の評価実験のみならず,研究課題2のいくつかの手法においてアプリケーションの動作を確認している.今後更なる改良を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究課題1では,既存クラウドサービスを利用することなく単独で動作する汎用的な位置依存型P2P通信方式を策定した.まだ改良の余地は残されているものの,現段階では安定的に動作する通信基盤となっており,想定以上の進捗であると判断する.2018年度には,査読付論文1件(採録決定),国際会議発表1件,国内研究会発表2件,国内大会発表3件を実施した. 研究課題2では3つのユースケースを想定し,研究課題1で策定した通信基盤のパラメータ設定について検討を進めた.特に歩車間通信を実現するための通信範囲の決定方式について検討を行い,利用者から高い主観評価結果を得ている.よって,非常に順調に進んでいると考えられる.2018年度には,査読付論文1件(採録決定),国際会議1件,国内研究会発表2件,国内大会発表5件を実施した. 研究課題3ではAndroidスマートフォンへの実装がかなり進展しており,非常に安定したアプリケーションがすでに開発されている.また,この実装モデルをベースとして,拡張を施した複数のアプリケーションを実現させた. 以上のことから,当初の計画以上に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は,当初の研究計画のとおり,研究課題1,研究課題2,および研究課題3を同時並行して進める予定である.研究課題1については,位置依存形P2P通信をエラーなく実現できてはいるものの,ユーザ端末が増加した場合の対策についてはまだ検討を行っていない.スケーラビリティを確保し大規模なサービスを実現するために,端末情報管理サーバの負荷分散方式と,そのときのプロトコル開発を実施する予定である.研究課題2では,2018年度に引き続いて,個々のユースケースにおけるパラメータ設定の結果を統合し,パラメータ決定のメカニズムについて検討を始める.近隣環境や通信状況に応じて自律的なパラメータの設定を可能にし,シームレスな位置依存型通信の実現を目指す.研究課題3では,すでに安定して動作するAndroidアプリケーションの開発に成功している.2019年度は,より汎用的な方法での通信機能の実装方式を検討したいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年7月に研究協力者のOlivier Fourmaux准教授(フランス・ソルボンヌ大学情報学研究所)との研究打合せを行った.フランスでの別件の用務があったため,渡航費を約半分に抑えることができた.現在のところ,非常に多くの研究成果が得られており,2019年度は学会発表にかかる費用が膨らむ可能性が考えられる.そこで,繰越予算は主に学会発表のための出張旅費として使用する予定である.また,実装実験の規模を拡大する予定である.
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