本課題では,ライン単位処理をベースとした実時間画像センシング向け超低遅延動画像符号化方式に関する技術を確立するという目標に対し,ほぼ期待通りの成果を得ることができた.車両やロボットの自動制御,IoT機器間の画像データ転送を対象とした本研究の符号化技術では,Full-HDクラスの動画像をマイクロ秒オーダーの超低遅延で転送することを目的とする.提案符号化アルゴリズムとして(1)ライン単位および画素単位での画像予測,(2)ダイナミックレンジ適応型量子化,(3)コンテキスト適応型準固定長符号化,を組み合わせ高画質かつ高圧縮率を実現しつつ低遅延伝送を実現する. 平成29年度および平成30年度は,WS上にて上記のアルゴリズムシミュレータを構築し高画質かつ高圧縮である符号化アルゴリズムをシミュレーションにより設計検証した.この設計の過程で直交変換手法など様々な符号化ツールをオプションとして取り入れ、高画質を維持したまま1/5の圧縮率を実現し、高圧縮率実現のための様々な知見を得ることができた. 令和2年度は検証した符号化アルゴリズムを実現するプロセッサアーキテクチャを設計し、FPGA上でのシステム実装を行った。処理遅延を1マイクロ秒以下に収めかつ小規模回路で実現することを目標に,高位設計手法を用いて回路を生成しハードウェア実装およひ検証を実施した.回路規模を低減するために,検証済みの符号化アルゴリズムを規模削減の観点から最適化しシミュレーションで検証することで、画質や圧縮率の劣化を最小限に抑えつつハードウェア規模削減と低遅延性を両立した.これにより、小規模な回路で超低遅延動画像符号化システムを構築することが実証できた. 今後は4K/8Kクラスの高精細動画像に対して,これまで得られた知見をベースに新たな符号化アルゴリズムの提案および小規模・低コストなシステムの実証に向けて検討を進める.
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