研究実績の概要 |
本研究は,光無線通信において問題となる,大気乱流に起因した伝送特性劣化を克服すべく,ラゲールガウス(LG)ビームに着目し,シンチレーションの影響を軽減するモードを見出し,モード間干渉の小さいモードの組み合わせにより多重伝送を行う方式を確立することを目的としている. 平成29年度は,LGビームを単一モードで伝送したときの特性評価に取り組んだ.まず,より現実的な乱流モデル及びシステムを想定し,LGビームを用いた光無線通信システムのシンチレーションと通信特性の評価を行った.LGビームのモードは,輪帯の数に依存するラジアル次数nと位相のスパイラル数に依存するアジマス次数mの2種類の次数を有する.本研究では,ラジアル次数n=0,1,3,5,7,アジマス次数m=0,1,3,5,7の25通りの組合せ,及び既存の光無線装置の送信ビーム径,受信機開口のサイズを用いて計算機シミュレーションを行った.その結果,LGビームはガウスビームよりもシンチレーションの影響が軽減し,特に強い乱流中において通信特性が改善されることがわかった. また,本研究課題は,光無線通信を対象としたものであるが,典型的な伝搬路において,LGビームの有するモードの組み合わせとモード間干渉との関係を明確にできることから,LGビームをミリ波,テラヘルツ波へ応用する際にも貴重な知見をもたらすものと期待できる.そこで,今年度は,UCA(Uniform Circular Array)アンテナによるOAM信号の空間的な電力・位相分布と受信電力特性を計算機シミュレーションにより取得・評価した.特性評価の結果,アンテナ素子数を増加させることにより,受信アンテナ径を小さくできるだけでなく,受信電力の増大が図れることがわかった.また,伝搬距離を短くとり,50GHz のような高い搬送波周波数を適用するとモード間の受信電力差を軽減でき,多重効果が期待できることがわかった.
|