研究課題/領域番号 |
17K06450
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
棟安 実治 関西大学, システム理工学部, 教授 (30229942)
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研究分担者 |
吉田 壮 関西大学, システム理工学部, 助教 (70780584)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | データ埋め込み / プロジェクタ / プロジェクションマッピング / DCT / 枠線検出 / 携帯端末 |
研究実績の概要 |
本年度は,まず従来の印刷画像へのデータ埋込・検出手法をプロジェクタ投影を用いたデータ取得に適用した検証を行った.この手法によって生成した画像をプロジェクタによって壁面に投影し,タブレットPCを用いて撮影・検出を行った.その結果として,印刷画像を撮影・検出を行った場合に比べて,かなり検出能力が落ちることを確認した.しかし,データ埋め込み時のゲインを調整することで,検出率を70%程度に保つことが可能であることも確認した.これによって,これまでの方法をベースとすることの妥当性が確認できた.また,サイネージ用のディスプレイとプロジェクタの性質の違いについても確認できた. 次にユーザインタフェースの開発では,画像特徴量とデータ埋め込みを併用する手法について検討を行った.画像特徴量を併用することで,識別可能なデータ量を増加させることが可能となり,同一画像に異なるデータを埋め込むことで利用用途の自由度を広げられる.また,画像特徴量にとっては雑音として働く埋め込みデータを特徴量の取得を妨げないように制御する方法についても提案し,方式の有用性の向上を図った.さらに画像の向き,枚数や埋め込みの有無を検知するインタフェースを開発することによって,取得すべき画像にフォーカスすることが可能なインタフェースの構築を可能とした. シミュレーションシステムについても,基礎的な検討を行い,ぼけ,幾何学変換,撮影レンズの歪みを模擬するシステムの構築を行った.このシステムの構築により,今後,方式の評価を行うために大幅な省力化を行える可能性があり,研究の進展に寄与することが期待できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
進捗状況としては,研究実績の概要にも示したとおり,研究実施計画に沿って順調に研究を実施している.特に検出のインタフェースについては,様々な状況に応じた読み取りが可能となっており,当初計画よりも進展していると考えられる.プロジェクタによる壁面投影に対する検出では,当初考えていた検出率よりも若干低めの結果が得られており,画像撮影時に当初予期しなかった色雑音が発生しているが,多数の実験と調査を重ねた結果,プロジェクタの投射方式によるものと推定されるため,それに対する対策を開発し,現在実証のための実験を開始しようとしているところである.これらの点から,このテーマについては当初予定から若干遅れてはいるが,原因が判明したことと現在,検討中である投射画像の作成に対する新しい方式により,十分挽回可能であると考えている. そのため,テーマによって多少の早い遅いはあるもののほぼ計画通り,研究は順調に推移していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は研究計画に従い,まずプロジェクタによる壁面投影に対する検出では,投影画像を適宜切り替えることで,検出率を向上させる手法について検討を進める.この際,検出側で現在問題となっている点の解決も行う. ユーザインタフェースの改良では画像特徴量だけでなく,パイロット信号などを組み合わせることも考慮に入れて,さらに有効なインタフェースの構築を行い,壁面投影のアルゴリズムに対するフィードバックを行う. 実環境シミュレーションシステムについては,部分的な影や反射を劣化として取り込むことにより,さらに実環境に近づけたシステムの構築を目指す.また,これまでの個々の劣化を順につなげるアプローチとは異なり,全体の劣化プロセスを近年注目を集めているDeep Neural Networkの一つであるGenerative Adversarial Networkを用いた投影画像の生成についてもアプローチしてみたいと考えている. 昨年度は初年度のため,国際会議の発表をあまり行えなかったが,発表する知見も増えてきたので,本年度は積極的に発表を行っていきたいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は,諸事情により海外出張を取りやめたため,学生分の出張旅費を含めて30万程度が執行できなかった.これは共同研究者の20万程度の旅費についても同様の理由である.また,プロジェクタとサイネージによる表示はかなり状況が異なることが判明したために,プロジェクタによる実験に注力するものとして,サイネージ用のディスプレイの購入を見送った. 本年度は,何件かの国際会議への投稿と出張を計画しているため,海外出張に関する分は着実に消化できると考えている.また,サイネージ用のディスプレイについても今年度の購入を予定しており,消化できると考えている.
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