研究課題/領域番号 |
17K06452
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研究機関 | 函館工業高等専門学校 |
研究代表者 |
丸山 珠美 函館工業高等専門学校, 生産システム工学科, 教授 (90735523)
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研究分担者 |
中村 尚彦 函館工業高等専門学校, 生産システム工学科, 准教授 (30435383)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ワイヤレス電力伝送 / WPT / マイクロ波融雪 / kQ積 / 電界結合方式 / 磁界結合方式 / アンテナ / 遺伝的アルゴリズム |
研究実績の概要 |
(a)「ワイヤレス電力伝送による氷雪上EV走行中自動給電」の検討として、廃線レールをフィーダーとするワイヤレス電力伝送に相応しい「電界結合ワイヤレス電力伝送(WPT)に対する氷雪影響について」、モーメント法(WIPL)を用いた電磁界解析を実施した。従来技術である高速道路の下に給電線を埋め込んでタイヤのスチールワイヤを受電部とした場合は積雪の影響がタイヤと道路の間に大きく出るのに対して、提案技術である、廃線レールを給電線とし、タイヤのホイールを受電部とした場合はワイヤレス電力伝送を行う部分への雪の影響が出にくいことをkQ積から計算したワイヤレス電力伝送効率により明らかにし、査読付き国際会議AWPT1件、国内学会1件、デモ1件の発表を行った。 (b) 廃線跡地のレールを高周波フィーダーに活用したワイヤレス電力伝送によるEV走行を目標として、レールをフィーダとしホイールから受電するスケールモデルを作成し、電力伝送効率が最大となるように、SパラメータからkQ積を求め整合回路、整流回路の設計を行い、EV模型の走行実験に成功した。本結果をワイヤレス電力伝送(WPT)コンテスト、査読付き国際会議ISAPでそれぞれ発表した。 (c) 導波管スロットアンテナとマグネトロンを用いたマイクロ波加熱による融雪装置について、先行技術である、建築学会論文誌に発表された名工大の論文を参考に、融雪エリア拡大のためのスロット配置最適化に関する基本検討を行い、新たな構造をいくつか考案した。また、この融雪用のマイクロ波を用いたワイヤレス電力伝送によって融雪装置上を走行する電気自動車(EV)について、スケールモデルを用いた解析設計を行い、実際に模型を走行させることに成功した。本結果を電子情報通信学会の国内大会(1件)およびワイヤレス電力伝送(WPT)コンテスト(1件)でそれぞれ発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(a)電界結合方式ワイヤレス電力伝送(WPT)について雪の影響を電磁界解析によって明らかにした。SパラメータとKQ積からワイヤレス電力伝送効率を求め、提案した新たな構造、すなわち廃線レールを給電線としタイヤのホイールを受電部とした構造の場合、従来の道路の下から給電する場合に比べて、周波数シフトや氷雪影響による損失の影響を受けにくいことを解析で明らかにした。これらの成果を、査読付き国際会議、国内大会でそれぞれ発表し、デモも実施した。 (b)廃線レールをフィーダーとし、タイヤのホイールを受電部とするワイヤレス電力伝送を用いた電気自動車(EV)のミニチュアモデルを試作し、整合回路および整流回路の最適化を行い提案構造の模型走行に成功した。しかし、発振器の設計はまだ済んでおらず今年度この設計を行う。廃線レールからさらに汎用性を広げる手法について考案中であり31年度の権利化を目指している。本試作結果について、国際会議1件、デモ1件、コンテスト1件それぞれ発表した。 (c)マイクロ波融雪について マグネトロンと導波管を用いてマイクロ波融雪装置を構築しサーモグラフィーを用いて氷と雪を解かす実験を行った。先行技術である建築学会で発表された名古屋大学の文献では、スロットは電磁界の働きをあまり考慮せずに配置されている。本研究では、融雪エリアを最大にするためのスロットの最適化と、融雪装置上をワイヤレス電力伝送で走行するEV模型の作成について取り組んだ。スロットの最適化についてはいくつか構造を考案しており、31年度の特許権利化を目指している。融雪装置上の模型走行については、受電部として線状アンテナをアレー化したものを設計し、EV模型の走行に成功した。本結果を電子情報通信学会のワイヤレス電力伝送(WPT)の部門で国内大会およびわいワイヤレス電力伝送コンテストで発表した。
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今後の研究の推進方策 |
(a)電界結合方式WPTとマイクロ波WPTに対する氷雪影響の解析と測定、氷雪上EV走行試験:氷雪影響の解明、氷雪影響を受けにくい構造についての研究は、前述のとおり概ね順調に進んでいる。しかし、解析精度については、まだ不充分であり解析と実験が一致するところまで至っていない。そこで、今年度は解析精度を高めて氷雪影響を実験値とともに明らかにしその結果を踏まえて氷雪上を走行する廃線レールをフィーダとするEV模型を構築する。 (b)廃線設備を応用するための装置設計試作、解析特性把握、屋内試験、屋外試験:30年度の解析、および試作では廃線レールのモデルを敢えて簡易化することにより、動作原理を解明や、新たな考案をしやすくしていた。本結果を踏まえて実用化につなげるため、レールの精密な構造や大きさをモデル化し、解析特性把握、試作、測定を実施する。 (c)マイクロ波融雪エリア拡大のために考案中の構造について、解析設計、実験を実施する。有効性を明らかにしたのち、査読付き国際会議で発表を行う。試作は研究分担者とともに、三次元プリンタや本校の工場の工作設備を駆使して試作する。マイクロ波融雪エリア拡大のために考案中の構造について、解析設計、実験を実施する。有効性を明らかにしたのち、査読付き国際会議で発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
9月のワイヤレス電力伝送コンテスト発表のための旅費について函館高専から支援金が出たため使用額に変更が生じた。本予算は、31年度の装置試作費用に計上して使用する。
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