研究課題/領域番号 |
17K06453
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研究機関 | 国立情報学研究所 |
研究代表者 |
金子 めぐみ 国立情報学研究所, アーキテクチャ科学研究系, 准教授 (10595739)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 無線通信 / 移動体通信システム / クラウド無線アクセスネットワーク(CRAN) / FogRAN / 無線資源割り当て / NOMA |
研究実績の概要 |
本研究は, 現在の移動体通信システムが直面する,無線資源不足問題の解決を研究する.移動体通信システムに割当てられた無線資源は有限で,近未来には急増する通信データ量に対処できなくなる.次世代移動体通信システム5Gの有力候補の1つであるクラウド無線アクセスネットワーク(CRAN)での無線資源割り当て法・干渉制御法の確立を目指す. H30年度ではまず,CRANでモバイルエッジコンピューティングを可能にする Fog Radio Access Network (FogRAN)の為のエネルギー利用効率向上を目的とし,干渉制御法及び 無線資源割り当て法を提案した.本提案法では,高いシステム性能を保証する為に必須な大規模信号処理を,クラウドでの中央集中制御と,各Fog Access Point (FogAP)での分散型処理に効率よく分割させる.更に,各スケジューリングフレーム単位で,全体のエネルギー利用効率を向上させるFogAPのみアクティベートさせる.これにより,前年度に提案したFogRANの総伝送速度の最大化を目指した無線資源割り当て法と比べて,新しい提案法では総伝送速度の劣化を抑えつつ,システム全体のエネルギー利用効率を改善できることを示した.また,提案法はフロントホールリンク遅延による不完璧なチャネル情報にロバストであり,従来法と比較して,システム全体の遅延特性や ユーザ間の公平性も大幅に改善できることを示した. 更に,5Gの要素技術である非直交多元接続(Non-Orthogonal Multiple Access, NOMA)を活用したFogRANの為の非直交無線資源割り当て法について研究を進めた. システム全体の総伝送速度を最大にする,最適な FogAP-ユーザ間のリンク選択問題を検討し,最適化アルゴリズムを考案した. 従来の直交無線資源割当て法と比較して,提案の非直交無線資源割り当て法は,システム全体の総伝送速度及びユーザ間の公平性において優れた特性を得られることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H30年度は概ね計画通り研究を進めることが出来た.以下に具体的に達成された項目を示す. 1. クラウド技術を活用したFogRANの周波数利用効率及びエネルギー利用効率を向上させる無線資源割り当て法・干渉制御法の確立:前年度に提案したFogRANの総伝送速度の最大化を目指した無線資源割り当て法と比べて,新しい提案法は総伝送速度の劣化を抑えつつ,システム全体のエネルギー利用効率を改善できた.また,提案法はフロントホールリンク遅延による不完璧なチャネル情報にロバストであり,従来法と比較して,システム全体の遅延特性や ユーザ間の公平性も大幅に改善した. 2. NOMAを活用した FogRANの為の最適な FogAP-ユーザ間のリンク選択問題の理論的性能解析:通信路容量を達成する理想的なSuperposition Coding (SC)法を仮定し,数理最適化により,システム全体の総伝送速度を最大にする最適な FogAP-ユーザ間のリンク選択を導出した. 3. NOMAを活用した FogRANの為の非直交無線資源割当て法の考案:2.の最適な FogAP-ユーザ間のリンク選択を実現する効率的な最適化アルゴリズムを提案し,従来の直交無線資源割当て法と比べてシステム全体の総伝送速度及びユーザ間の公平性を大幅に改善できることを明らかにした.
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今後の研究の推進方策 |
R1年度では,H29・H30で得られた知見に基づき,マルチキャリアシステムのように複数のリソースブロックを持つCRAN・FogRANのより複雑な条件下で,中央集中的制御・半自律分散的制御の為の非直交無線資源割当て法を考案する.また,NOMAを活用するシステムの特性に大きく影響する為,送信電力制御の最適化についても検討を進める.更に,通信路・制御情報取得にかかるオーバヘッドと,伝送速度・ユーザ間の公平性・エネルギー利用効率におけるシステム特性の最も良いバランスを達成する手法を確立する.
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次年度使用額が生じた理由 |
R1年度にH30年度に得られた研究成果を国際会議で発表する予定であり,また,論文掲載量も発生する見込みであるため,R1年度の使用額を多くする必要が生じた. 使用計画:1. 旅費:国際会議での研究成果発表と国内・海外共同研究者との打ち合わせを予定, 2. その他:学会参加費,学術論文誌の掲載量・別刷り代を予定
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