研究課題/領域番号 |
17K06457
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
飯山 宏一 金沢大学, 電子情報学系, 教授 (90202837)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 光計測 / 光距離計測 / 三次元計測 / イメージング / 光周波数掃引 / FMCW |
研究実績の概要 |
レーザ光源の光周波数掃引による光距離センサにおいて,測定精度の向上と高速化に関して研究を行った。本システムは,参照光と測定物体からの反射光の干渉信号を周波数解析することにより距離を求める方法である。本システムでは光周波数を時間に対して完全に線形に掃引することが不可欠であるが,実際には光周波数掃引に残存する非線形性のために,空間分解能および測定精度が大きく劣化する。そこで本研究では,補助干渉計を設けて,その干渉信号よりサンプリング信号を生成し,実際のセンシング信号をサンプルしFFT解析を行った。また,測定データにゼロ信号を追加することによる測距間隔の高密度化するとともに,FFT解析後の信号のピーク付近のデータ補間により,より高精度で距離を求めるアルゴリズムを開発した。 光源にはDFBレーザを用いることが多いが,本研究では面発光レーザ(VCSEL)を光源に用いた。これは,注入電流変調により光周波数を掃引する場合,VCSELの方がDFBレーザより最大で5倍程度の光周波数掃引幅が得られるからであり,このことより測定精度の向上が実現され,繰り返し測定の標準偏差がDFBレーザの15μmから5μmに向上した。さらに,測定信号サンプリングのための電子回路の高速化により,注入電流の変調周波数を従来の500Hzから1.5kHzまで向上させたことと,VCSELを用いて測定精度を向上させたことによりFFT解析結果の平均化が不要となり,従来と比べて10倍の高速化を実現した。 このシステムを用いて,様々な物体の形状計測を行い,従来は600秒の測定時間であったが,40秒で硬貨の詳細な形状計測(表面上の段差は100μm)が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,FMCW光距離計測システムを用いた物体形状計測において,測定精度の向上と高速化を目的としている。現在までの成果を従来と比較すると,以下となる。 ・測定精度の向上:VCSELを光源に用いて光周波数掃引幅を大きくすることにより,測定精度が従来より3倍向上した。 ・高速化:VCSELを光源に用いて測定精度を向上させたことにより,測定結果の平均化が不要なり,高速化が可能となった。また,電子回路の高速化により,光周波数掃引のための注入電流の変調周波数を高くすることができた。その結果,従来と比べて10倍の高速化を達成した。 以上より,本研究の目的を着実に実現していることから,「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,測定精度の向上と高速化の実現に関して研究を行う。 平成29年度に引き続き,干渉波形サンプリングの高速化のために,電子回路の高速化によるサンプリング信号の高速化と信号処理の高速化を行う。信号処理の高速化については,さらに高速なFFT演算アルゴリズムの導入を行っており,これにより光周波数掃引のための注入電流の変調周波数を高くすることができる。ただし,この場合はビームスキャナの動作速度も速くしなければならないため,ビームスキャナの回転精度の影響を受ける。現在のシステムでの最高速を目指す。具体的には,平成29年度の測定時間40秒を,10秒に短縮することを目指す。 また,サンプリングの高速化の別の方法として,VCSELの光周波数掃引の線形化にも取り組む。VCSELの光周波数掃引を線形化すれば,非線形性補正のための補助干渉計が不要となるために電子回路も不要となり,システムの簡易化とサンプリングの高速化が可能となる。測定時間10秒以下を目指す。
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