研究課題/領域番号 |
17K06458
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
森澤 正之 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (30220049)
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研究分担者 |
鈴木 裕 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (40516928)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 光ファイバセンサ / プラスチック光ファイバ / 膨潤性ポリマ / エレクトロスプレー法 / 静電塗布法 / POF |
研究実績の概要 |
本研究は、可燃性ガスの安全で高感度の検出のために、エレクトロスプレー (ESD)法を用いてクラッドを多層化したプラスチック・ ファイバ (POF) を用いることで、爆発限界の1/10の濃度である0.5%のメタンに対して30dB/mの 感度を持つPOFセンサの実現を目的とする。本研究は、①中間電極を持つESD製膜装置の製作とPOFコアポリマの帯電防止の検討、②ESD法によるポリマ薄膜作成、③ESD法による膨潤性ポリマクラッド型POFガスセンサ(単層クラッド型および多層クラッド型)の作成と基本的特性評価、④多層クラッド型POPガスセンサによるアルカン(プロパン、メタンなど)測定の4段階からなるが、初年度である平成29年度は、その最初のステップである「中間電極を持つESD製膜装置の製作」および、「イオン液体や界面活性剤による帯電防止の検討」を行った。 【中間電極を持つESD製膜装置の製作】 キャピラリと対向電極の間に、2つの電極を追加した。一つはキャピラリの近傍に設置した環状電極であり、もう一つは、対向電極の近傍に設置したホール電極である。キャピラリの極近くに環状電極を配置してキャピラリ内のポリマー溶液を帯電させることにより、より低い電圧でエレクトロスプレーを形成することができ、また、ホール電極によりスプレーを収集することができた、これにより装置全体として低電圧で、POF上にESD法による塗布が行えた。 【イオン液体や界面活性剤による帯電防止の検討】 多層化クラッドの下位層を、膨潤性ポリマとイオン液体の混合ポリマで形成し、上位層をESD法による色素ドープ膨潤性ポリマで作製した。イオン液体により導電性が増すために下位層は帯電しにくくなる。その結果、ESD法によって形成する上位層は、スプレーを反発することなく均一に積層することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である平成29年度は、研究の4段階の最初のステップである「中間電極を持つESD製膜装置の製作」および、「イオン液体や界面活性剤による帯電防止の検討」を行なう計画になっていた。本年度は、その両方を達成することができた。ただし、ESD成膜装置の製作に関しては、中間電極と対向電極間に高圧の交流電圧を印加することにより帯電を防止することも研究計画に入っていたが、これは実現できなかった。来年度、検討する必要がある。また、POFに薄膜を形成するためには、POFを回転させながら静電塗布を行うことが有効であるが、この回転装置も今年は実現できなかった。これについても来年度以降に検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、本年度達成できなかった中間電極と対向電極間に高圧交流電圧を印加する効果を検討する。しかし、本年度の結果から、イオン液体などによるPOF上の帯電防止の効果が予想以上に大きかったので、必要性が低くなる可能性がでてきた。これらを含めて、来年度に再検討を行う。来年度は、4段階の研究計画の2ステップ目である、「ESD法によるポリマ薄膜作成」に取り組む。現時点でも薄膜は形成できているが、電極間距離、印加電圧、使用するイオン液体、界面活性剤の量などのパラメータを変化させたときの薄膜の状態を表面段差計などを使用して観測し、最適な薄膜形成パラメータを模索する。さらに、POFへのクラッド形成を試み、膨潤性ポリマクラッド型POFガスセンサとしての基本特性を測定していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は以下の通りである。 1.中間電極を有するエレクトロスプレー装置の製作において、既存の備品を用いることが可能であったこと。また、他の方法が有効であったために、高圧交流電源の購入を再検討している最中で有り、その購入が遅れていること。 2.代表者が病気のため長期療養が必要だったため、旅費等の使用が遅れたこと。 次年度は、今年度購入予定でまだ購入していないものを購入する予定で有り、また、代表者の健康も回復したため旅費などの使用も問題ないものと思われる。
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