研究課題/領域番号 |
17K06462
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
西藤 聖二 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (60253168)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ブレインマシンインターフェース / 聴性定常反応 / 確率共鳴 |
研究実績の概要 |
本研究の主目的は「確率共鳴を用いた聴覚型ブレインマシンインターフェース(BMI)の開発」である。現在のBMIの主流である視覚型BMIを用いるためには視覚刺激を注視する機能が必要であり、進行した筋萎縮性側索硬化症患者などの眼球運動制御が困難なユーザは使用できない。本研究は、現時点で視覚型BMIよりも性能が劣っている聴覚型BMIに確率共鳴現象を応用することにより、その性能を視覚型BMIと同等レベルまで引き上げることを目的としている。本研究の研究期間は3年間であり、平成29年度では【1】聴覚刺激に対する定常応答(聴性定常反応)における確率共鳴現象の特性調査と、【2】確率共鳴を用いた聴覚型BMIの構築と評価の2項目について研究を執り行った。 【1】に関しては、先行研究の成果を参考に、振幅変調音(変調周波数35~45Hz、搬送周波数500~4kHz、変調度100%、音圧60dB)に白色雑音(音圧30~55dB)を加えた刺激音を提示した時の聴性定常反応の大きさを評価し、確率共鳴の起こる条件を調べた(健常成人被験者7名)。4名の被験者から確率共鳴と判断される雑音による振幅の増大が観測された。確率共鳴の起こる音刺激条件は変調周波数・搬送周波数共に個人に依存する部分が大きいが、雑音音圧は50dB以下であった。 【2】では、健常成人9名を対象として、2つの振幅変調音(左:変調周波数44Hz、搬送周波数770Hz、右:変調周波数40Hz、搬送周波数500Hz、いずれも音圧60dB)に独立に白色雑音(音圧約30dB)を加えた音刺激を左右から提示し、一方の音に意識を向けた時の聴性定常反応の変調を用いたBMIを提案した。機械学習(サポートベクトルマシン)によって被験者の選択した音を判別したときの判別精度の被験者平均は、印加雑音なしの場合が67%、印加雑音を加えた場合が77%となり、10%の改善がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
振幅変調音に雑音を加えた場合に、聴覚型BMIの判別精度が被験者平均で約10%向上するとの結果を得ることができた。この結果により、提案したBMIのオンライン化の見通しがついたといってよい。ただし、被験者9名の内、3名は雑音付加によって判別精度の改善がみられなかった。この原因としては、刺激音の条件を雑音の音圧を含めて統一したため、最適な条件で行っていなかったことが考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、平成30年度において、提案した聴覚BMIのデータ蓄積及び判別手法の検討(ニューラルネットワークの利用を含む)を行うとともに、オンライン化を進めていく。特に、平成29年度には統一していた音刺激条件を、予備測定を行い、その結果を用いて最適化した上で、最大の確率共鳴が誘発される条件でBMIを適用するように工夫する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度(平成29年度)に予定していた論文投稿料の使用を次年度(平成30年度)に持ち越すことになったため。次年度では論文投稿料の一部に充当する予定である。
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