研究実績の概要 |
当該年度では、確率共鳴を用いた聴覚型ブレインマシンインターフェース(BMI)の開発を進めるために、(1)確率共鳴を誘発するために聴覚刺激に付加する雑音の選定、(2)2値の意思を想定した2つの振幅変調音(付加雑音なし)の一方に選択的注意を払ったときの聴性定常反応の変調を適切に判別する方法の検討、の2項目について研究を執り行った。 項目(1)は、白色雑音、ピンク雑音、ブラウン雑音(周波数fとしたとき、それぞれ1/f^0,1/f, 1/f^2の特性を有する)を用いた。健常者6名を対象として、搬送周波数500Hz, 変調周波数40Hz、音圧40~50dBの振幅変調音に各雑音を付加した刺激音に対する聴性定常反応について、雑音の音圧を0(雑音付加なし)~56dBの範囲で変えたときの振幅対雑音比の雑音強度依存性をクラスター分析によって分類した。その結果、全720の雑音依存性データの内、背景雑音による確率共鳴の誘発の可能性がある単調減少型依存性(雑音無付加時の信号対雑音比が最大となる)を除いた499の雑音依存性データでは、78%がベル型依存性を示した。雑音別では、ピンク雑音で87%のデータがベル型依存性を示し、白色雑音では78%、ブラウン雑音の場合は71%であり、ピンク雑音が最も確率共鳴を誘発しやすい雑音であると考えられた。 項目(2)については、畳み込みニューラルネットワークと長・短期記憶ユニットを持つ回帰型ニューラルネットワークを組み合わせた判別器により、サポートベクトルマシンを用いた判別器よりも健常者5名の被験者平均で10%以上(58%->69%)精度を改善できた。視覚型BMIと比べて判別精度自体にはまだ改善の余地がある。
|