研究課題/領域番号 |
17K06464
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
緒方 公一 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (10264277)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 信号処理 / マッピング / パターン |
研究実績の概要 |
本研究は,先に開発した声道音響管マッピングインタフェースが,多次元のパラメータを効率的に制御したり,音声信号から声道形状を逆推定できたりする特長を発想の原点として,その深化と共に,マップに基づく効率的なモノの制御,計測できる出力信号からの原因としての入力信号(状態)の推定などへの応用を目指すものである。 本年度は,「(A) 声道形状マッピングインタフェースを基盤とした音声合成及び声道形状逆推定の深化」を大テーマとして,「(1)マッピングインタフェースによる声道・音声の相互変換計測及び有用性検証(2)子音を考慮したマップ構成の研究」を中心に取り組んだ。具体的には,逆推定に利用可能なマップ領域の拡張機構を実現し,より多様な声道形状も扱える環境を構築した。また,得られた逆推定の結果のパターンについて,被験者の特徴の評価などを行った。更に,子音を含んだ音声についての声道形状逆推定についても検討を行い,逆推定された声道形状に関するマップ上の軌跡(パターン)を評価した。有声無声の子音の違いや,後続の母音環境の違いにより軌跡が異なり,語頭母音から子音へ向けて調音運動が移行する際に,その子音に後続する母音の影響が既に表れていることを示唆する結果などが得られている。これは,音声生成における軌道計画の特性を反映したものと考えられ,今後,種々の条件下での軌跡(パターン)の評価が期待される。このように,本来多次元のパラメータをマップ上で表現できる効用の一端が確認できた。これらの他,基盤となる音声合成システムのパラメータの設定が容易となるシステム開発なども実施し,関連するパラメータを容易に設定,また変更する枠組みの基盤を実現している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画書では,『声道形状の逆推定結果の妥当性や形状のバリエーション評価を進め,1次元信号である音声信号と多次元パラメータである声道形状との関係を,特にマップ上の軌跡について評価検討する。』予定としていたが,上記の実績の概要のように,逆推定に利用可能なマップ領域の拡張機構の実現,被験者の特徴の評価,子音を含んだ音声のマップ上の軌跡検討が行なわれており,ほぼ計画通りに進んでいるため。
|
今後の研究の推進方策 |
子音を含んだ音声の逆推定の研究等を継続するが,実音声を用いた実験ではノイズの影響で,軌跡の開始点や終了点などの見い出しが困難な点もあるので,合成音声に基づいてシミュレーションを実施するなど検討する。また,応用展開として,体の姿勢全体ではモーションキャプチャ装置,手指の動きでは,ARマーカ等の活用,視線や瞬き状態については既開発の視線システムを改変して,それぞれ多次元のパラメータの値を取得できる環境を構築し,データ収集や分析を検討している。また環境構築には,研究室で進行中のOpenCV画像処理ライブラリやARマーカの応用研究の技術や成果も活用して研究を実施する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
多少の増減はあるが各費目ほぼ配当額に近い執行額となっており,次年使用額は小額である。信号検出センサについては適合性などを確認しながら段階的に購入を進めていることもあり,一括購入としなかった分差額が生じた。最近の信号検出センサのバリエーションは年々と増加傾向にあるので,それを見極めながら次年度使用額を活用して購入する。
|