研究課題/領域番号 |
17K06469
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
関 篤志 創価大学, 理工学部, 教授 (70226629)
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研究分担者 |
渡辺 一弘 創価大学, 理工学部, 教授 (40240478)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 酸素センサ / ルテニウム錯体 / 銀ナノ粒子 / 電場増強 / 蛍光増強 |
研究実績の概要 |
当該年度は,酸素感受性蛍光色素であるルテニウム(Ru)錯体と銀ナノ粒子(AgNP)を酢酸セルロースメンブランフィルタ上に固定化し,これに励起光を照射したときの蛍光特性について検討した. AgNPとしては,クエン酸還元したままの懸濁液,ポリアニオンと混合した懸濁液,およびポリアニオンと混合した懸濁液を用いた.Ruとしては,水溶液,ポリアニオンを加えた水溶液,およびポリカチオンを加えた水溶液を用いた.固定化法としては,AgNPを含む懸濁液をメンブランフィルタ上に滴下し,乾燥後にRuを含む水溶液を滴下することにより行った.乾燥後に,波長470 nmのLED光を照射し,蛍光スペクトルを測定した. AgNP懸濁液とRu水溶液を滴下した場合の蛍光強度はRuのみの場合と比較して波長520 nmの蛍光強度は減少した.これはRuとAgNPが接触したために消光が起きたためと考えられる.AgNP-ポリカチオン混合液を滴下した後にRu-ポリアニオン混合液を滴下した場合は,Ru水溶液を滴下した場合と比較して最大で約2倍の蛍光強度が得られた.これは表面に負電荷を有するAgNPの周りをポリカチオンが取り囲み,正電荷を有するRu錯体がポリアニオンと複合体を形成したため,AgNPとRuが接することなく一定の距離を保つことができたため,蛍光増強が起こったと考えられる.また,AgNP-ポリアニオン混合液を滴下した後にRu水溶液をした場合は,Ru水溶液を滴下した場合と比較して最大で約1.3倍の蛍光強度が得られた.これは添加したポリイオンによりRu錯体とAgNPが接触することなく一定の距離が保たれたため蛍光増強が起こったと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
蛍光増強を起こすためには蛍光色素と銀ナノ粒子とが接触せずに,適切な距離を保つことが必要である.そこでポリカチオン水溶液で銀ナノ粒子を懸濁した溶液と,蛍光色素とポリアニオンを混合した溶液とを混合して通常の蛍光測定を行った.しかし蛍光増強は認められなかった,これはポリイオン同士が会合して励起光および蛍光が散乱されたために蛍光測定が適切に行えなかったためと考えれた. そこで,固体基盤上に銀ナノ粒子が適切な密度で分散された状態で固定化することを試みた.コロナ対策のため授業準備に時間がかかり,様々なポリカチオンとポリアニオンを用いて蛍光増強に最適な材料の検討に時間を掛けることができなかった.
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今後の研究の推進方策 |
ルテニウム錯体との距離を適切に維持して蛍光増強を起こすため,銀ナノ粒子表面にポリカチオンとポリアニオの交互積層膜を形成する.銀ナノ粒子懸濁液にポリカチオン水溶液を加えた後に遠心して沈殿を蒸留水で洗浄することによりポリカチオンで被覆された銀ナノ粒子を調製する.これをポリカチオン水溶液に加えた後に遠心洗浄することによりポリカチオンの上にポリアニオンで被覆された銀ナノ粒子を調製する.この操作を繰り返すことにより,交互積層膜で覆われた銀ナノ粒子を調製する.様々な積層数で覆われた銀ナノ粒子を調製し.ルテニウム錯体水溶液と混合して蛍光スペクトルを測定する.これにより蛍光増強に最適な積層数を求める.次に,交互積層で被覆された銀ナノ粒子とルテニウム錯体との混合液をメンブランフィルタ上に滴下して乾燥させる.これに励起光を照射して蛍光スペクトルを測定することにより,薄膜に固定化した状態での蛍光増強を確認する. 次に光ファイバを用いて蛍光増強を利用する酸素センサを作製する.光ファイバ末端にポリアニオン膜を形成し,この中に蛍光色素を含浸させる.この上に蛍光増強を起こすのに最適な積層数の交互積層膜を形成し,この表面に銀ナノ粒子を固定化させることにより光ファイバの片端から励起光を導入し,末端で発生する蛍光をカプラを介して分光器に導入する.得られる蛍光スペクトルを銀ナノ粒子が無い場合と比較して,蛍光増強型酸素センサの特性を解析する.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため計画通りに研究が進まず,購入した器具などは予定より少なかったため,次年度使用額が生じた. これは今年度の器具・試薬の購入に使用する予定である.
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