研究実績の概要 |
本研究の目的は、介護・福祉用ロボットのように、近距離から遠距離まで広い範囲の距離検出が必要な機器に対し、可聴音を用いてロボットから人間までの距離を検知するための測距システムを実現することにある。従来は、スピーカとマイクロホン間の測定系と観測雑音の影響を受け、測定精度が劣化した。既に位相干渉に基づく音響測距法については、様々な見地から有用性を確認しており、今年度は以下の成果が得られた。 1.近接2ch マイクロホンを導入しクロススペクトル法を適用することによって測定系の影響を除去し、さらに音源としてリニアチャープ音を用い2回必要であったフーリエ変換の回数を削減した(中迫他, システム制御情報学会論文誌, 30巻, pp.339-346)。さらに同期加算による雑音対策も提案した(中迫他、電気学会論文誌C, 137巻, pp.1443-1444)。これらは測定系の影響と環境雑音に対する実用的な対策になると思われる。 2.近接2ch マイクロホンの観測信号に対して独立成分分析(ICA: Independent Component Analysis)を適用することを考えた。本年度は実用的に瞬時ICAを適用した(村田他, 日本音響学会講演論文集, pp.563-564, 2017.9) 。これにより、環境雑音(とくに指向性雑音)の除去についてはある程度の道筋がついたと思われる。 3.位相干渉に基づく音響測距法は様々な応用が期待される。例えば、マイコンを用いたシステムの試作(C. Song et al., Proc. of ICSV24, CD-ROM(8ページ))、音響測距法による多重反射を利用した音源距離の推定(本多他, 電子情報通信学会論文誌A, J100-A巻, pp.295-298)などについて可能性を検討している。 以上を踏まえ平成30年度以降の測距システムの開発につなげたい。
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