研究実績の概要 |
本研究の目的は、介護・福祉用ロボットのように、近距離から遠距離まで広い範囲の距離検出が必要な機器に対し、可聴音の位相干渉を用いて人間までの距離を検知する測距システムを実現することにある。従来、スピーカとマイクロホン間の測定系と観測雑音の影響を受け測定精度が劣化した。音響測距法およびその雑音処理について今年度は以下の成果が得られた。 1.近接2ch マイクロホンを導入しクロススペクトル法を適用することによって距離推定において測定系の影響を除去できる。同じ原理で移動物体の距離と速度を推定する手法を提案した(中迫他, SCI'19予稿集, CD-ROM(4ページ), 2019.5)。 2.近接2chマイクロホンを複数組み合わせた観測信号に対して独立成分分析(ICA: Independent Component Analysis)を適用することを考えた。H29, H30年度までの単独の近接 2ch マイクロホンではマイク間隔が近すぎるため、見かけ上、測距信号と雑音を分離できても測定系の影響は除去できなかった。本年度は近接2ch マイクロホンを2 セット(共通のマイクを1つ考えると結果的には近接3ch マイクロホン)導入し、それぞれの2ch観測信号に複素ICAを適用した(田井他, 日本音響学会講論集, pp.275-276, 2019.9)。その結果、測定系の影響と環境雑音の両方が除去できる可能性が示唆された。 3.位相干渉に基づく音響測距法の拡張や応用も検討した。例えば、マイコンを用いた超近距離測定システムの試作(中迫他, SICEセンシングフォーラム予稿集, CD-ROM収録, 4ページ, 2019.9)、送信波の帯域を超音波域まで広げることによる距離測定の分解能の向上(北野他, 日本音響学会講論集, pp.279-280, 2019.9)などである。
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