研究課題/領域番号 |
17K06476
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研究機関 | 旭川工業高等専門学校 |
研究代表者 |
横井 直倫 旭川工業高等専門学校, 機械システム工学科, 准教授 (60353223)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ナノ粒子 / 光学力 / 粒子制御 / 血液成分分析 |
研究実績の概要 |
本研究は、レーザー光の有する光学力により血液中のナノサイズの粒子状不純物を非侵襲に除去でき、同時にマイクロサイズの血球成分(赤血球、白血球、血小板)の計数と色彩計測に基づき血液成分を定量分析できる輸血用血液の浄化・成分分析システムを構築し、さらに分析結果の共有を目的とした本システムのオンライン化を目指して遂行された。 平成29年度は、まずレーザー光の照明下にある液体中のナノサイズの微粒子の移動経路を粒子直径や周囲媒質の粘度等をパラメーターとして数値計算し、その挙動を解析することができる液中微粒子挙動解析用ソフトウェアを、科学技術計算用汎用アプリケーションMATLABを用いることにより開発した。 次に、本ソフトウェアを用いた数値シミュレーションに基づき、微粒子の捕捉に必要とされる最適なレーザー光の放射照度、スペックルサイズ等の光学条件を評価し、捕捉可能な粒子直径の範囲、粒子捕捉領域サイズ、粒子捕捉時間等を定量的に評価した。 さらに、本評価で得られた最適光学条件に基づき、レーザー光の有する光学力により血液からナノサイズの粒子状不純物のみを選択的に捕捉しなおかつ除去することができる微粒子操作用光学系を、高出力ファイバーレーザー光源、マイクロ流路システム、1軸可動ステージ等を用いて構成した。 その上で、本光学系に基づくナノサイズの粒子径標準粒子を対象とした粒子制御実験により、本光学系がナノサイズの粒子状不純物を除去できる性能を有することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、レーザー照明下における液中微粒子挙動解析用ソフトウェアの開発に関しては、レーザーを光拡散性物体に照射したときに生じる粒状の光強度パターンである「スペックル」の照明下にあるナノサイズの単一微粒子の移動経路を、光学力や粒子周囲媒質の温度、粘度等をパラメータとしてシミュレーション可能なソフトウェアを開発することができた。 次に、本ソフトウェアを用いた数値シミュレーションに基づき、微粒子の捕捉に必要とされる最適なレーザー光の放射照度、スペックルサイズ等の光学条件を評価した。その結果、既知の粒子直径の下で、粒子捕捉時間と粒子捕捉領域サイズがいずれもスペックルサイズに依存して変化することが明らかとなった。なお、捕捉可能な粒子径の下限はスペックルサイズの約十分の一、上限はスペックルサイズと同程度であった。さらに、一定のスペックルサイズの下で、放射照度の上昇につれて捕捉領域サイズが縮小することも明らかとなった。以上より、既知の粒子直径とスペックルサイズの下で、放射照度の調整により捕捉領域サイズを制御できることが確認された。 さらに、本評価で得られた最適光学条件に基づき、レーザーの有する光学力により血液中からナノサイズの粒子状不純物のみを選択的に捕捉し除去することができる微粒子操作用光学系を構成し、本光学系に基づきナノサイズの粒子径標準粒子を対象とした捕捉実験を実施した結果、本光学系がナノサイズの粒子状不純物を除去できる性能を有することを確認することができた。 従って、レーザー照明下における液中微粒子挙動解析用ソフトウェアの開発と本ソフトに基づく微粒子捕捉のための最適光学条件の数値評価、ならびにナノサイズの粒子状不純物を捕捉し除去できる微粒子操作用光学系の構成と性能確認をいずれもほぼ目的通りに実現することができたため、本研究課題はおおむね順調に進展しているものと評価した。
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今後の研究の推進方策 |
液中微粒子挙動解析用ソフトウェアの開発に関しては、現状ではナノサイズの単一微粒子を対象としたシミュレーションを実施しているが、実際には複数の粒子状不純物が凝集した状態で血液中に浮遊する状況も想定される。従って、今後は単一微粒子のみならず、微粒子凝集体の挙動もシミュレーションできるようソフトウェアを改善していく必要があると考えている。 また、微粒子操作用光学系に関しては、現状では粒子制御の際の1軸可動ステージの操作を手動で行っており、今後、ステージの自動制御を行えるようシステムを改善していく必要があると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費に関しては、平成29年度末に発注した物品のうち一部が年度内に納品困難となったため、次年度使用額が発生するに到った。また、旅費に関しては年度の初期段階に出席した国際会議に交付決定が間に合わず、その旅費を所属高専の内部資金で代用したため、次年度使用額が発生するに到った。平成29年度に発生した次年度使用額に関しては、その全額を平成30年度内に計画的に使用する予定である。
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