研究課題/領域番号 |
17K06477
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研究機関 | 東京都立産業技術高等専門学校 |
研究代表者 |
福田 恵子 東京都立産業技術高等専門学校, ものづくり工学科, 教授 (70396266)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 近赤外分光法 / 脳機能計測 / 脳血流 / 皮膚血流 |
研究実績の概要 |
本研究では、近赤外分光法(NIRS)による脳機能計測において、血流動態の変化を脳反応の信号から分離する補正技術と信号パターンの解析技術の統合を図り、脳反応信号の特性と反応領域の推定を行うことを目指している。本年度の研究実績は以下の通りである。 (1) 前頭部における脳活動の定量的に評価に向けたfMRIによる検証実験 昨年度に考案した2種類の実験課題を用いてfMRIによる検証実験を行った。実験課題は順次呈示される矢印の向きを記憶して答える課題(以下、短期記憶課題)とひらがなの文字色と文字意味の干渉効果を見るストループ効果と抑制効果を重畳した課題(以下、ストループGO/NOGO課題)である。同意を得た11名の被検者に関して1.5TのfMRI装置(東京電機大学千葉共用施設)を用いて測定を行い、SPM12反応部位を推定した。fMRI実験の結果、短期記憶課題では、前頭前野、頭頂連合野に反応がみられ、矢印の向きに対する反応と課題に対する集中度が評価できると考えられる。また、ストループGO/NOGO課題では前頭前野の広範囲で反応がみられた。これらの2種類の実験課題の有用性が確認できた。 (2) NIRS 計測における補正技術の検討 血流動態の変化を脳反応の信号から分離する補正技術に関しては補正手段の拡充と信号処理手法の検討に取り組んだ。補正手段は正三角形を基本としたセンサ配置を持ち、3種類の補正信号と測定信号を取得できる。まず、補正手段の拡充に向けて6チャネルのセンサを頭部に装着するためのホルダーの改良を行った。頭部曲率に合わせた2段構造とすることで密着して装着できることを確認した。次に、拡散光トモグラフィの原理を応用した信号劣化低減手法(深さ選択性フィルタ)についてMatlabによるプラットフォームを作成して解析を行い、提案する補正手段に適用した際に高い効果が得られることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
fMRIによる信号領域の推定と解析手法についてははおおむね順調である。補正手段の拡充については頭部への装着法の改良にやや時間を費やしてしまい、やや遅れが生じている。装置を構成するバンドルファイバや回路の設計は終了しており、解析用ソフトウエアも構築できているため、今後、装置評価と生体評価実験を行い、解析法との統合を図る。
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今後の研究の推進方策 |
fMRIによる信号領域の推定は実験課題が適正であることが明らかとなったため、NIRS実験を行い照合する。市販のNIRS装置では基礎実験を行い、実験環境や計測方法の確認が終了している。今後、複数の被検者による計測を行い信号特性の傾向を把握し、血流動態の影響を調べる。また、補正手段を持つ装置については装置の拡充を図り、評価実験を行う。さらに、信号劣化低減手法により血液量変化の影響を補正して脳反応信号の特性と反応領域の推定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
補正手段の拡充の実施について計画に遅れが生じ、これらの使用計画が遅れたために次年度使用額が生じた。これらに関して次年度に実施する。補正手段の拡充について①バンドルファイバ、②回路・信号処理システム、③プローブ装着具の改良を図るため、光学素子、電子部品、光ファイバなどが主な内訳である。また、本研究により得られるNIRSの精度向上の効果を学会にて発表を行うための参加費や旅費及び論文の投稿料、英文書校正代などに使用する。
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