研究課題/領域番号 |
17K06478
|
研究機関 | 石川工業高等専門学校 |
研究代表者 |
深見 哲男 石川工業高等専門学校, 電気工学科, 教授 (60115269)
|
研究分担者 |
東 亮一 石川工業高等専門学校, 電気工学科, 准教授 (10435422)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 計測工学 / 超高層物理学 / 下部電離層 / イオノグラム / シミュレーション工学 |
研究実績の概要 |
本研究は,宇宙の渚と呼ばれる下部電離層を,総合的な地上定常計測システムのデータを用いて電離層電子密度分布を推定する手法を開発することを目的としている。この定常的な観測データとして,日本では,まず,情報通信研究機構のイオノグラムがある。これは,国分寺などの国内5か所において15分毎に定常的に観測されている。そして,これに申請者等が行う中波強度観測等を加味する。一方,推定手法の開発として,イオノグラムの見かけ高さ特性曲線から下部電離層上部の電子密度分布を推定し,中波帯の強度観測資料等の減衰特性からより低い部分の電子密度分布を推定していく。 申請者等が考案したイオノグラムから下部電離層電子密度分布を推定する手法を開発することに主眼に置いた。まず,ロケット実験のデータと比較することによって手法の信頼性を2018年の国際会議で示した。そして,国際参照電離層(IRI)と実際の情報通信研究機構のイオノグラムの違いを一例で示し,この例に関してイオノグラムだけから電離層電子密度分布を推定することに成功し,2019年の国際会議で発表した。また,この電子密度分布推定シミュレーション計算法を2020年度の国際会議(URSI2020)で発表予定であった。しかし,この国際会議は,コロナウイルス関連のため1年延期された。 また,2012年5月21日に日本を通過した金環日食時,申請者等は,日食における下部電離層変化に着目し,中波強度観測を行っている。今回,2019年に二度発生した日本の部分日食も同様に中波観測を行い,金環日食時と日射強度では同等であった1月6日の部分日食との差異を調べたが,従来説では説明が困難な結果となっている。これは,2020年3月に発表(学会の開催は中止),今後原因を調査していく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
情報通信研究機構のイオノグラム資料から電離層電子密度分布を具体的に推定し,2019年6月の国際会議で発表し,推定技法の発表を,2020年の国際電波科学連合(URSI)の国際会議で行い最終的な検討調査を行う予定であったが,コロナウイルスにより2021年度に開催が延期された。推定シミュレーション開発に関する研究成果に対して,おおむね順調に推移しているが,2020年度に成果に関するフィードバックができないため,進捗状況はやや遅れていると思われる。 総合観測システムの構築に関しては,コロナウイルスによる学校休業の影響等により,中波観測システムと長波(標準電波)観測システムを結合した観測システムの起動等が困難になっており,進捗状況はやや遅れている。 両者を合わせて,やや遅れていると思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
現在,コロナウイルス対応に関する遠隔授業用の授業資料を新規に作成するため,かなり研究時間が奪われている。その中において,最終の2020年度は,以下の研究を推進する。 イオノグラムから下部電離層電子密度分布の推定シミュレーション技法開発に関する研究成果は,ほぼ研究目的を達成し,後は最終的な発表調査のみとなっており,当初の研究目的をほぼ達成している。 更に,イオノグラムで観測できない低電子密度分布の推定に関して,まず,申請者等がすぐに情報を得ることができる中波強度観測と標準電波観測の同時観測システムを起動させる。これにより電離層E層下部からD領域の情報を得ることができるので,イオノグラムが測定できないE層下部の電離層の推定法を改善させる研究を行う。 また,イオノグラムから下部電離層電子密度の推定法は,受信したイオノグラムの強度も評価し,推定に使用できる。しかし,現在,そのイオノグラムの受信強度の詳細をまだ使っていない。そこで,新たな研究として過去の情報通信研究機構の公開イオノグラム資料からイオノグラム送受信機の性能評価を調査研究し,電離層での反射係数を見積もる。これによって,申請者等のシミュレーション技法が更に向上することが期待されるので研究していきたい。 一方,2012年の金環日食と2019年の部分日食を中波強度で受信比較した結果から,従来説では説明が困難になっている問題も合わせて検討研究していきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスのため学会発表が中止になったため次年度使用が発生した。2020年度も予定していた国際会議(URSI2020)が2021年に移行したため,日食の問題を含めて学会等で発表調査していくための必要経費に充てたい。
|