研究課題/領域番号 |
17K06480
|
研究機関 | 大分工業高等専門学校 |
研究代表者 |
岡 茂八郎 大分工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (80107838)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 鉄損 / 渦電流損 / ビルディングファクター / ステータコア / 極薄電磁鋼板 / 高調波 / PWM |
研究実績の概要 |
研究開始2年目の本年度は,以下の3項目について主に研究を行った。第1に,正弦波励磁型の「高速AD, DAコンバータを用いた磁気特性測定装置」(高速磁気特性測定装置)のプログラムを改良し,模擬PWM波形で励磁できる「高速磁気特性測定装置」に改良した。第2に,実際に実用されている実機PWMインバータを「高速磁気特性測定装置」に追加した。この改良によって,PWM波励磁下でリングコアやステータコアの磁気特性の評価を可能とした。第3に,「巻き線励磁法」を用いての小型高速モータのステータコアの磁気特性評価を行った。第1と第3については,「高速磁気特性測定装置」は高速のAD, DAコンバータや高速のパワーアンプを備えていることから,正弦波のみでなく高調波を含む方形波や,模擬PWM波励磁下で,0.35mm厚電磁鋼板や0.08mm厚極薄電磁鋼板で作られたリングコアや小型高速モータ用ステータコアの磁気特性評価を行った。方形波励磁下の上記2種の電磁鋼板で製作されたリングコアの磁気特性について,5月のSEAD31(長野市)において報告した。また,上記2種の電磁鋼板で作られた小型高速モータ用ステータコアの模擬PWM波励磁下の磁気特性は,7月のAPSAEM2018(インドネシア)において報告した。なお,この際に用いた励磁法は,本年度実用化した「巻き線励磁法」えある。さらに,上記2種の電磁鋼板で作られたリングコアの磁気特性は,9月のICEM2018(ギリシャ)において報告した。第2については,実機PWMインバータを用いて,より広いキャリア周波数(20kHzまで)や変調周波数(200Hzまで)を用いて上記2種の電磁鋼板で作られたリングコアの磁気特性評価を行った。その結果は,3月の電気学会マグネティクス研究会(大分)で報告した。以上が,本年度の研究実績の概要である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記評価の理由は,第1に,「高速磁気特性測定装置」の駆動用プログラムを模擬PWM励磁を可能にすることや実機PWMインバータを組み込み自動測定を可能するなどの改良が終了したことである。第2に,メッシュ作成ソフトや磁界解析ソフトを用いて「巻き線励磁法」の磁界解析が終了したことである。第3に,0.35mm厚の電磁鋼板や0.08mm厚極薄電磁鋼板で作成したリングコアや小型高速モータコアを用いて主に高調波を多く含んだ波形である方形波励磁下や模擬PWM波励磁下,および,実機PWMインバータ励磁下での磁気特性の収集・評価・比較を行ったことである。具体的には,0.35mm厚の電磁鋼板製と0.08mm厚極薄電磁鋼板製のリングコアや科型高速モータのステータコアの磁気特性(B-H曲線,鉄損)の変調周波数依存性,キャリア周波数依存性,変調率依存性,励磁磁束密度特性依存性を評価することができた。また,上記2種の電磁鋼板で作られた小型高速モータ用ステータコアの磁気特性(B-H曲線,鉄損)を「巻き線励磁法」で評価することができた。よって,この2年間かけて構築し,プログラムを改良した「高速磁気特性評価装置」,および,実機PWMインバータを追加した「高速磁気特性評価装置」は,これらの値を妥当な値で評価することができた。その結果,従来の0.35mm厚の電磁鋼板で作られたステータコアよりも0.08mm厚極薄電磁鋼板で作成したステータコアの性能が小型高速モータに適していることを示した。これらの結果から改良した「高速磁気特性評価装置」は十分に08mm厚極薄電磁鋼板製ステータコアの性能を評価できるものであった。以上を総合して,この研究は,「高速磁気特性評価装置」の開発・改良や小型高速モータのステータコアの磁気特性測定用励磁法の開発概ね順調に進んでいると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
この研究の2年目であった平成30年度は,「高速磁気特性評価装置」の駆動プログラムの改良と,それを用いた0.35mm厚の電磁鋼板製と0.08mm厚極薄電磁鋼板製のリングコア,および,小型高速モータのステータコアの磁気特性評価,および,比較を主に行った。最終年度である次年度は,実機PWMインバータでは,今回実験に用いた程度の小型のリングコア((内径 50mm,外形 60mm,積み厚 5mm))やステータコア(内径 28.4mm,外形 12.6mm,積み厚 12.5mm)では,スイッティング用IGBTの飽和コレクタ電圧が鉄損の測定に影響を及ぼすことが判明したので,この現象の解明と対策を行ったパワーMOS-FETを使用したPWMインバータの開発基礎となるデータの収集を行いたいと考えている。また,現状では,正弦波励磁時の鉄損とPWM波励磁時の鉄損を,正弦波励磁の場合では観測した鉄心の磁束密度の最大値とPWM励磁の場合では観測した鉄心の磁束密度の基本波の最大値が同じになる様にして比較している。これを,両者とも観測した鉄心の磁束密度の最大値が同じにして各種磁気特性を比較できるように駆動用プログラムを改良したいと考えている。特に,PWM励磁時にも鉄損をヒステリシス損と渦電流損に分離し,比較する手法を確立したいと考えている。さらに,現状の形状の試料だけでなく,もう少し大きいステータコアを対象にして,本研究で開発している各種励磁法を用いた磁気特性評価法を開発したいとも考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
励磁コアの製作費やPWMインバータの製作のための電子部品の購入費を考えていたが,これらが想定よりも安価に購入できたこと,および,研究補助員を雇用しなかったために次年度使用金額が生じた。 次年度使用金については,本年度もさらに研究を進展させるために,資料収集のための学会参加や会議出席のために使用したいと考えている。
|