この研究の目的は,以下の2つの技術的課題を達成することである。第1は,高速モータのステータコアの正確な鉄損評価のため,従来の「商用正弦波励磁下のビルディングファクター評価装置」を,高速ADコンバータや高速DAコンバータ,さらに,高速パワーアンプを用いることによって高い励磁周波数の正弦波でステータコアの鉄損を評価できる「高速のビルディングファクター評価装置」を構築することである。第2に,複雑な形状をしたステータコアの正確な鉄損が評価できるように励磁する手法(ステータコア励磁法)を開発することである。また,PWM波励磁時のステータコアの鉄損を評価できるように「高速のビルディングファクター評価装置」を改良することであった。3年間の研究の結果,以下の成果を得た。①広い速度域で用いられる高出力高効率モータのステータコアを対象に高速ADコンバータや高速DAコンバータを備えた「高速ビルディングファクター評価装置」を構築した。②「高速ビルディングファクター評価装置」に汎用PWMインバータや初期試作専用PWMインバータを組み込んだ。③高出力高効率モータのステータコアの磁気特性を評価するために各種ステータ励磁法(「双外側励磁法」,「内側励磁法」,「巻き線励磁法」)を考案,製作し,その利点や欠点を評価した。④各種ステータコア励磁法の中では,「巻き線励磁法」が手軽にステータコアの磁気特性を計測できた。⑤試作した「高速ビルディングファクター評価装置」は,この研究で用いた試料の範囲内では正弦波励磁時はfexは2kHz,Bexmaxは1.2T程度まで,PWM波励磁下では,fmは200Hz,fcは20kHz,Bexmaxは1.2T程度まで測定可能であった。⑥0.08mm厚の極薄電磁鋼板は,高速高出力高効率モータのコア材として特に有効であることを示した。以上のように,研究の目的を達成することができた。
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