本研究では、電磁力による超微小トルクの計測技術によって、万有引力定数Gの精密な評価を行うことが目的である。本研究の代表者は、先行研究においてプランク定数の絶対測定に関する研究で用いられているキッブルバランス法を応用した、電磁力によるトルク発生装置(JSPS科研費15K18081)を開発している。この装置は、電圧測定モード(一様な磁場中に置かれた矩形コイルを一定の角速度で回転させ、矩形コイルに生じる誘導起電力と角速度を測定し、矩形コイルを貫く全磁束および誘導起電力が最大となる角度位置を評価する)と、電流測定モード(先述の一様な磁場中に置かれた矩形コイルに電流を流してトルクを発生させる)の2つの実験を行うことで、国際単位系SIにトレーサブルなトルクを発生させることができる。本研究では、この電磁力によるトルク発生装置の高度化を図り、ねじればかりの原理に基づくGの実験装置において、万有引力によって発生する極めて小さなトルクを直接計測するという新しい方法で、Gを評価する。当該年度は、万有引力の発生源となる鋼球(重力源および試験体をそれぞれ2個ずつ)を設計・製作し、それらの質量および直径について、それぞれ質量および長さの国家標準にトレーサブルな評価を行った。試験体を設置するためのモーメントアームを設計・製作し、長さの国家標準にトレーサブルな評価を行った。重力源は、Z軸方向微動装置上に設置し、試験体と重力源の高さ(中心位置)が一致するよう調整を行った。電磁力によるトルク発生装置において、より精密な角度の評価を行うために、自己校正型ロータリーエンコーダの原理に基づいた角度位置評価システムと、カウンタ-電圧同時計測システムの開発を行った。さらに空調などの影響を低減するために風防を設置するなどし、Gの精密測定を実施するための要素技術の開発と評価、調整を進めた。
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