研究課題/領域番号 |
17K06488
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
陶山 貢市 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (80226612)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 制御工学 / システム工学 / 制御システム / メンテナンス |
研究実績の概要 |
製造物責任や国際規格上,製造者は製品の適切なメンテナンス手法を使用者に告知する義務を負っている.しかし,国際規格では部品交換などの必須作業が列挙されているだけで,それらの作業を安全に行うための環境に関しては何も記載されていない.通常の稼動状態とその環境との間の移行も現場技術者の経験に頼っていることが多く,特にプロセス産業ではメンテナンス時に事故が発生する原因となっている.本研究では,工業製品・生産現場の制御システムのメンテナンスを安全に行うための環境を作り出す技術を世界に先駆けて確立し,将来,国際規格に反映させることを目的とする. これまでの研究業績を有機的に組み合わせることにより,本研究で確立する制御システムのメンテナンス支援技術のプロトタイプはすでに得られており,国際会議20th IFAC World Congress, Toulouse, France, July 10-14, 2017で発表した(IFAC PapersOnLineでも公開されている).具体的には,サブシステムのメンテナンスのための停止に対してはフォールト・トレランス設計の手法で対応する.サブシステムの安全なメンテナンス環境を実現するには,通常稼働状態との間で稼働状態を移行させる必要があるが,その際には切替L2ゲインを安全性評価・管理のための指標とする.平成29年度は,上記の国際会議における意見交換などをもとに,このプロトタイプについて制御理論上の細部のつめを行った. また,本メンテナンス支援技術を具現化するソフトウエアとして,制御システムの稼働状態移行の安全性評価・管理をコンピュータ上で適切かつ効率的に行うためのソフトウエアを開発した. さらに,過去にディペンダビリティを評価した3ループのサーボ系を数値例として採用し,様々なシナリオを想定したシミュレーションを行い,本技術の安全性・実用性を検証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究で確立する制御システムのメンテナンス支援技術の中核をなすプロトタイプを第一の雑誌論文で発表することができた.それに加えて,稼働状態の移行直後の制御システムの乱れ具合の定量的解析・評価に有効な切替L2ゲインを用いて,制御器のリセットに関する研究成果を得ることができた(第二の雑誌論文).さらに,この切替L2ゲインそのものの理論的な研究成果は,発生時刻が予測不可能なシステムの切り替わりの影響を定量的に評価する指標の提案という観点から論文にまとめ,すでに学術雑誌International Journal of Controlへの掲載が決定している(第四の雑誌論文).
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に得られた結果をさらに深化させる.特に本メンテナンス支援技術の実用性を向上させるため,アルゴリズム面での検討・改良を行う.また,それをソフトウエアの形で具現化する予定である.同時に,国際規格への反映を目指す活動として,国際会議やSNSを通じた諸外国の規格関係者への研究成果のアピールも積極的に行っていきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)平成29年度は,研究成果である本メンテナンス支援技術を具現化するソフトウエア,すなわち制御システムの稼働状態移行の安全性を評価・管理するソフトウエアを効率的に開発するため,高性能なPCワークステーションと開発のベースとなる計算ソフトウエアMatlabを購入し,計算機環境を増強・整備する予定であった.平成29年4月の交付申請書作成時には,前者の費用として100万円を予定していたが,同等のスペックのものを約75万円で購入することができた.また,後者については,当初は新しいライセンスを購入予定であったが,研究遂行にあたって既存のライセンスで対応可能であることが分かり,購入しなかった.その結果,旅費が当初の予定額を超過した分,さらには当初予定していなかった学術雑誌掲載論文のための英文校正費用分を差し引いても,全体として3万円余の次年度使用額が生じた. (使用計画)上述したように,研究成果を具現化するソフトウエアの開発を行うにあたって,計算機環境は当初の予定とまったく同等である.そのため,研究計画自体に変更はない.なお,次年度使用額は,平成30年度請求額とあわせて,学術雑誌掲載論文のための英文校正費用などに充てる予定である.
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