研究課題/領域番号 |
17K06490
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
平田 研二 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 教授 (40314364)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | エネルギーマネージメントシステム / 分散制御 / 価格提示 |
研究実績の概要 |
次世代のエネルギー需要・供給ネットワークにおける需要家、供給家を自身の利得確保を目指すエージェントと捉える。また、社会としての公共の利得確保を目指す独立した運用機関であるユティリティーの存在を想定する。本研究では、ユティリティーによる税金・補助金に対応する仮想的な価格の提示と各エージェントの分散意思決定により、エネルギー需要供給ネットワークの最適な運用状態への誘導を可能としている。具体的には、発電拠点、蓄電拠点および蓄電設備を有する発電拠点を対象として、電圧制御問題、出力抑制指令への対応問題に対して、分散型の制御方策を提案するとともに、実機実験による有効性の検証を実施した。またとくに本年度の研究では、需要拠点を対象とした分散型の運用を検討し、需要拠点固有の問題であるチャタリング現象の発生メカニズを明らかにすることができた。さらに本研究の特徴である価格を利用した運用方策と実際の電力取引の相互作用検証を目指し、価格競争モデルの検討と入札、約定を繰り返す市場のシミュレータの構築にも着手することができている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
発電拠点、蓄電拠点および蓄電設備を備えた発電拠点を対象とした電圧制御問題、出力抑制指令への対応問題に対して、実時間価格提示方策を利用した分散型の制御則を提案した。また実機実験による有効性の検証も実施することができている。発電拠点を対象とした電圧制御問題では、分散型の制御方策を提案するとともに、5MW の容量を有する太陽光発電システムを想定した実機実験により、その有効性を検証することができている。また蓄電設備を備えた太陽光発電システムを想定した出力抑制指令への対応問題では、分散制御による太陽光発電システム、蓄電設備の相互運用が可能であることを実機実験を含めて明らかにしている。蓄電設備を対象とした出力抑制指令への対応問題では、とくに提案する価格提示方策にワインドアップ現象が生じる可能性があることを指摘するとともに、これを回避するための新たな実装手順を提案することができている。需要拠点を対象とした分散型の運用では、オン、オフや上、中、下といった離散的な指令値しか受け入れない需要機器が存在する可能性があり、出力値が振動を繰り返すチャタリング現象が発生しうる。このチャタリング現象発生のメカニズムを明らかにすると共に、これを回避する分散型の運用方策を提案することができている。本研究の特徴である価格提示方策は、実際の需要者に対しては誘因として働く。これに対する応答には、需要者個人の特性が反映される。そこで需要者の特性を加味した数値シミュレーション環境の構築を目指し、価格競争モデルの特性の解析、ならびに入札、約定を繰り返す学習型の市場のシミュレータの構築に着手した。これにより、需要者の特性を加味した市場取引の模擬に関する取り組みも開始することができている。
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今後の研究の推進方策 |
発電拠点、蓄電拠点に加え、消費拠点における需要調整を可能とする分散型の制御方策の提案をおこなうことができている。今後の課題として、発電拠点、蓄電拠点、消費拠点の協調的な運用を可能とする分散型の制御方策を提案する。これにより、分散型の仮想発電所 (Virtual Power Plant, VPP) の運用を可能とする。VPP の実現には、これまでに提案、検討することのできている発電拠点、蓄電拠点、消費拠点の運用方策に加え、これらを協調的に動作させるための上位の運用方策が必要になる。したがって、階層型の分散制御方策の提案が必要となる。現在、階層型の分散制御方策の設計については、一部着手することができており、VPP 実現のための運用方策提案は十分に可能と考えている。また価格競争モデルの特性の解析については、エネルギー需要・供給ネットワークの地理的な情報を加味することが重要であるとの知見がえられた。地理的情報を加味した価格競争モデルの解析も今後の課題となっている。
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