研究課題/領域番号 |
17K06492
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤本 健治 京都大学, 工学研究科, 教授 (10293903)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 非線形制御 / 最適制御 / システム同定 / ガウス過程回帰 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、制御工学の分野に機械学習や統計的データ解析の方法論を導入し、これまでの確定的なモデルに基づく制御ではなくデータに基づく制御を可能にすることです。また本研究では、得られた統計的な情報を用いた制御手法を航空宇宙分野に応用することを目標としています。この目的のもと本研究では、ガウス過程回帰に基づいた制御系のシステム同定と設計の問題を取り扱いました。 ガウス過程回帰とは、入出力データからその入出力の非線形の関係式を推定するノンパラメトリックな手法で、これまでの制御工学の分野にはない特徴を持った方法です。各データ間に多変数ガウス分布の関係があるという仮定の下で、入出力間の関係をガウス分布の形で得ることの出来る手法です。このように大変汎用性の高い手法である一方、推定結果がどのような関数になるかは事前には不明であり、事前に予想されるよりも複雑なモデルが推定されてしまうなどの問題点がありました。本研究では、設計パラメータであるカーネル関数の選び方と推定されるモデルの性質の関係を考察し、入力飽和やヒステリシス等の実用的な非線形性を扱うための推定手法を導きました。 また設計問題としては、非線形システムの最適制御を行う際に解くことが必要となるハミルトンヤコビ不等式と呼ばれる偏微分不等式を、上に述べたガウス過程回帰を用いて解く手法を開発しました。先に述べましたようにガウス過程回帰とは、未知の非線形の入出力関係を、入出力データから推定する手法であり、そのままでは偏微分不等式を解くことはできません。状態変数とそこでの不等式の解である値関数の値をサンプリングすることにより偏微分不等式を解く手法を開発しました。これにより、従来の推定手法を設計問題に利用することができ、これまでになかった新しい非線形制御系の設計手法が得られることになります。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
制御工学と機械学習の融合という難しい問題に対して、初年度に重要な理論的な成果を導いていることから、研究は概ね順調に進んでいると考えています。先にも述べましたように、本研究ではガウス過程回帰に基づいた制御系のシステム同定と設計の問題を取り扱いました。 ガウス過程を用いたシステム同定の研究は、申請者らのグループのものも含めてこれまでにいくつかの結果が報告されています。しかしガウス過程回帰はノンパラメトリックな推定手法であることから、推定されるモデルの性質の予測が難しい。これまでの推定手法をそのまま用いるだけでは、事前に予想されるよりも複雑なモデルが推定されることが多かった。本研究ではこの問題に対し、実用的で簡潔な推定モデルが得られる手法を開発しており、実際の制御問題への応用が加速すると期待されます。 設計問題に関しても大きな進展が得られています。機械学習の手法は基本的にデータからモデルを推定する手法であり、制御系設計等の最適化問題にはそのままでは用いることのできないものです。本研究は、偏微分不等式の解法に推定のツールを用いたという点が新しく、この成果によって機械学習の手法の多くが制御系設計に利用できる可能性を持っています。また実際の設計問題にも直ちに応用でき、次年度以降の研究にも直接的に役立つ成果が得られています。以上の理由から、研究の進展は順調であると考えます。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方針は、これまでに得られた成果を2つの方向に発展させることにあります。2つの方向とは、理論的な制御アルゴリズムの開発と、実際の制御問題への応用を意味しています。 理論的なアルゴリズムの開発の重要な方向性の一つとして、非線形制御系の設計問題への機械学習の応用をさらに深化させる事があげられます。上にも述べましたように、制御系設計問題は一般にパラメトリックな最適化問題となることが多く、機械学習のような推定手法とはあまりなじまない問題でした。しかし初年度の研究において、最適化問題である制御系設計問題を、機械学習の推定のツール用いて解くという手法が開発できたことから、同様のアイデアを用いて様々な最適化問題を、さまざまな機械学習のツールを使って解くことが出来るようになる可能性があります。このような方針に沿って、理論的な研究を行う予定です。 一方、本研究課題の目標の一つとして航空宇宙工学への応用が掲げられています。航空機は流体中を運動することから、複雑な挙動を示します。また空気のモデルは正確にはわからないことから、確率的なモデル化やそれに基づく制御が必要となります。本研究で開発したガウス過程回帰に基づくシステム同定と制御系設計の手法は、上記のような不確かさを有する航空機の制御問題に力を発揮できる大きな可能性を持っています。今後は実際の航空機の制御問題を扱って行きたいと考えています。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は主に研究室の資源を使った理論研究に集中したこと、またこれによって次年度以降に行うべき応用研究の分量が増したことにより、初年度に使う予定であった研究費を主に次年度以降で利用することとした。また初年度の成果発表となる国際会議への出張を次年度に複数回予定しており、初年度の予算を次年度に流用する必要が生じたこともこの変更の理由となります。 次年度の計画としては、高速PCを用いた数値シミュレーションを行う予定であり、その購入に予算を利用します。また3つの国際会議 (European Control Conference, American Control Conference, IEEE Conference on Decision and Control) にて、初年度の理論的な成果の発表を予定しており、これらの旅費としても使用する予定です。
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