本年度の成果は以下の通りである。 結合入力出力アプローチに基づく不安定系の閉ループ同定に関して考察を進めた。線形時不変システムの積と対応するブロックテプリッツ行列の積について考察した。それに基づいて、OKID と呼ばれる閉ループ同定手法(Juang ら1993)とこれまでに提案した閉ループ同定手法との比較を行った。この結果をSICE Annual Conference 2021で発表した(査読有)。 研究協力者とガウス・マルコフモデルにおけるプロセスノイズと出力ノイズの共分散行列の推定値について解析した。いくつかの数値シミュレーションから、これまでに提案したCCA(正準相関分析)重み付け行列を用いたノイズ共分散推定法が良い性能を示すという結果が得られた。この問題に対するBLUE(best linear unbiased estimate)を導出し、提案手法の推定値とBLUEを比較した。この結果を研究協力者とともに第64回自動制御連合講演会で発表した。 研究協力者とBLUE(best linear unbiased estimator)における重み付け行列のランクについて数値的に解析した.重み付け行列は特異行列であるため、擬似逆行列の計算にはそのランクが必要となる。重み付け行列のランクを数値的に解析し、これがシステムの次数と出力数とfuture horizon により表されることを示した。この結果を研究協力者とともにMSCS 2022で発表した。 研究期間を通して、パラメータ依存システムの同定について局所点から統計的な方法でモデルを構築する方法についての方法を提案した。局所点におけるモデルの精度も重要であるため、線形時不変系の同定や雑音共分散に関する研究を行い、閉ループ同定に関する知見も得られた。
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