さまざまな非線要素の和合によってダイナミクスを性能保証付きで設計する数理的手法の開発を目指した。まず、積分入力状態安定性という概念を拡張することで多次元システムの単調型の表現を導出し、独自の単調保存変換を作り上げ、その求解と数理性質の解析により基盤を整備した。次に、モジュール追加あるいはシステム同士の結合によって生まれる多次元性は、個別状態では隠れていた非線形領域にダイナミクスを誘導し、孤立単体にはない現象を発現させ、大量エネルギの放出・消費や、崩壊につながる危険性があることを数式的に確認した。そこで、これを予測・防止するための非線形性の和合の指標として、「入力のない収束性」と「入力のある有界性」を融合した数理的定式化を行った。これを単調性の活用による(制御)リアプノフ関数の統一構成法へと発展させることができた。これは幾何学的なものであり、有界ではない非線形要素の和合を直感的に予測・確立できる独創的で実用性の高いブレイクスルーとなった。このアイディアはシステムの大きさによらずスケーラブルに適用できることも明らかにし、巨大ネットワークへにおける非線形性の和合も予測・確立を可能にした。その成果の理論的応用として、非線形システム制御におけるフィードバック制御器の設計論の開発に取り組んだ。その一つとして、オブザーバを用いた出力フィードバック制御問題に対し、測定ノイズがある環境でも制御性能に大域的保証を与える設計理論を世界で初めて完成させることができた。その成果を応用することで、持続ノイズがある場合には状態の区間を特定するようなインターバルオブザーバ(状態モニター)の開発にも成功した。
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