研究課題/領域番号 |
17K06502
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
國松 禎明 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 助教 (30379309)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 耐故障制御 / オンライン保守 / 冗長入力 / PID制御 |
研究実績の概要 |
平成29年度における研究実績は以下のとおりである. 1) これまで筆者らは冗長入力を有する制御対象に対して耐故障性を考慮可能なPID制御系を提案してきた.この制御系に任意の1箇所でアクチュエータ故障が発生したとしても,参照入力から出力までの目標値伝達関数がほぼ変化しないという意味において,制御性能が保証されることを示した.さらに,稼働中のシステムを止めることなく保守点検を可能とするオンライン保守について,保守点検の時間は事前に知り得ることを利用して,オンライン保守の実現可能性についても示した. 2) オンライン保守の実現を念頭に,冗長入力を有するシステムを制御対象として検討してきたが,これまでは相対次数が2以下の最小位相系(不安定系を含む)に限定されていた.そこで,並列補償器を導入することで,3以上の高次相対次数を持つ最小位相系に対しても耐故障性を有する制御系の設計法を提案した. 3) 安定な非最小位相系に対する耐故障性の実現においては,耐故障性を優先することで通常時の制御性能が劣化してしまう場合があった.そこで,耐故障制御に適した2自由度制御系に関する研究を行い,まだ十分とは言えないが,耐故障制御を想定した2自由度制御系に関する一つの設計法を与えた. 4) 断線故障だけでなく,経年劣化によるゲイン低下等に起因するセンサ異常や制御対象の不確かさに対する耐故障性について考察し,センサ異常や不確かさに対応可能な条件を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の進捗状況から,研究はおおむね順調に進展していると考えている. 1) 冗長入力を有するPID制御系におけるアクチュエータ故障時の制御性能保証について,目標値伝達関数に関する性質として具体的に与えることができた.この性質を利用して,オンライン保守の実現可能性についても示した. 2) これまで相対次数2以下の最小位相系のみ適用可能だった冗長入力を有する耐故障制御系を拡張し,相対次数に制約のない耐故障制御手法を提案した.これは平成30年度実施予定分を一部先取りした結果となっている. 3) 安定な非最小位相系に対しても,2自由度制御系を利用して制御性能を保証可能な耐故障制御手法を提案した. 4) センサ故障については,実装に関することを含め検討する必要があり,断線ではなくゲイン低下等の異常に関する研究として行った.センサの冗長性については,その実装方法も含め今後検討していく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度では,以下の研究を中心に推進していく予定である. 1)平成29年度でも一部考察しているが,これまでの手法から適用範囲を広げるために,制御対象に並列補償器を付加した上で,制御性能を考慮した耐故障制御の実現を目指す. 2)並列補償器を利用した耐故障制御系はPID制御のみによる方法に比べて制御性能の確保が難しくなる可能性がある.そこで,オンライン保守性を実現するために,出力の乱れを最小にする手法の導出を目指す. 3)これまでの提案手法では制御対象の不確かさについてはほとんど考慮していないため,制御対象の不確かさに対するロバスト性等の検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)当初予定していた機器の購入を次年度に変更したこと.および,それに伴い,実験補助用のアルバイト謝金が生じなかったため. (使用計画)提案手法の有効性を確認するための機器の購入費として見込んでいる.
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