ほぼ同一のダイナミクスを有する複数の非線形システムが結合し,ネットワークを構成することで生じる全体の振舞いに.同期現象やパターン形成がある.遅延結合ネットワークシステムの同期問題は広く研究がなされてきているが,それを人工物に応用する場合,その結合は離散時間化が避けられない.そこで,本研究では,これまでの遅延結合ネットワークにおける同期条件や同期パターンの推定法などを,サンプル値ネットワークシステムとして再構築し,サンプリング間隔を含めた同期条件とネットワーク構造との関係を明らかにすることを目的としている. 本年度は,最終年度として.これまでに行ったサブテーマa) サンプル値結合ネットワークシステムの同期問題,b) 不確かな時変むだ時間サンプル値非線形システムの安定解析法,に関する結果をまとめ,その上で,それらを融合したc) 不確かな伝送遅延を持つサンプル値結合非線形システムの同期パターン制御について検討を行ったほか,a)の結果の拡張の検討を行った.特に,サンプル値結合ネットワークシステムの同期条件として,前年度導出した2つの双方向結合システムにおけるサンプリング間隔と結合強度と同期との関係を基に,N個の完全グラフネットワークにおける同期条件の推定法を示したのち,より一般的な無向グラフネットワークにおける同期条件の推定法を導出した.これらの結果は,遅延結合連続時間ネットワークシステムの同期問題と密接に関係した結果であることを明らかにした.さらに,実システムにおける結合系を考えたとき,各システムのサンプリングは,必ずしも同期しない.そこで,非同期サンプリングによる結合を行った際に,同期へ与える影響についても検討を行った.これらの結果は,一部はすでに審査付き国際会議での採択が決定している.最後に,本年度が本研究テーマの最終年度であり,3年間で得られた成果の総括を行った.
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