(1) 新規のスケーリング抵抗性評価試験の確立:新規に提案するスケーリング抵抗性評価試験である小片凍結融解試験を確立させるため、試験体寸法や評価指標の改良を行った。既存の試験に比べて,簡便かつ省力的に多くの水準の試験が可能である小片凍結融解試験の有用性について確認した。また、ASTM C672などの既存のスケーリング抵抗性評価試験方法とある程度の整合性があることを示した。 (2) 新規のスケーリング抵抗性評価試験による劣化メカニズムの検討:00水セメント比等の構造物の耐久性に関連する配合的要因及び、最低気温及び凍結防止剤の濃度等の環境的要因について、小片凍結融解試験により評価し、スケーリング劣化のメカニズムの解明を試み、スケーリングが‐5℃から塩水の共晶点である-20℃の温度域で発生することを明らかにした。スケーリングのメカニズムに関する新しい知見を多くえた。これらの結果をもとに、耐久性を向上させる手法として中空微小球混和材の有効性を明らかにした。 (3) 施工による構造物のスケーリング抵抗性の低下についての検討とその対策の提案:構造物の実際の施工を再現した試験により施工による構造物のスケーリング抵抗性の変動について把握し、そのスケーリング抵抗性の変動を引き起こす現象について検証を行い、施工によるスケーリング抵抗性の変動の対策を、実際に実施した検証実験に基づき、その対策案を提案した。 (4) 岩手県および東北地方におけるスケーリング発生危険度マップの提案:これまで得た知見をもとに、スケーリングの発生条件に基づき、岩手県をはじめとする積雪寒冷地域の東北地方におけるスケーリング劣化の危険度を、年間の最低気温及び凍結防止剤の散布量データを参照し評価した。東北における道路構造物のスケーリング劣化危険地域を新たに指摘することができた。
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