研究課題/領域番号 |
17K06510
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大西 正光 京都大学, 防災研究所, 准教授 (10402968)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | PPP / リスクマネジメント / 流動性 / 予備費 |
研究実績の概要 |
本研究課題は,Holmstrom and Tirole(以下,HT)によって提唱された流動性需給理論(以下,HT理論)に基づき,PPP事業における適切なリスク分担に関する考え方の確立を目的としている.2年目となる平成30年度では,研究計画で示した「課題B:最適予備費及び予備費確保に伴う費用の計測手法の確立」と「課題C:流動性供給の役割分担を考慮したPPP 事業における最適リスク分担の考え方の確立」に取り組んだ.課題Bについて,流動性需要の理論に基づけば,最適予備費は信用割当の可能性が大きい(すなわち,信用度が低くエージェンシー費用が高い)ほど大きくなる.信用割当の大きさは自己資本比率の大きさに比例する.また,PPP事業における民間事業者が負うリスクは,そのスキームに依存する.PPP事業の事業スキームの類型を公共経済学及び契約理論に基づき整理した上で,事業スキームごとに生じる取引費用について整理を行った.その上で,スキームごとに流動性需要のリスク要因を同定し,リスク要因と信用割当の程度を同時に評価した予備費評価のプロトタイプモデルを提示した.課題Cについては,PPP事業の対象がインフラのような公共性の高いサービスであることから,経済危機のようなマクロ経済ショックの場合に,政府が流動性を供給する必要性についてHT理論に基づき指摘した.そこでは,特に開発途上国のように政府の財務能力が限定的な場合には,国際金融機関が流動性供給を行うことにより事業の経営安定性が向上し,社会的厚生が向上することを指摘した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、研究計画における課題Bと課題Cに取り組む予定であり,それぞれの課題に対して一定の結論及び成果を導いており,概ね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は,本研究課題の最終年度である.平成30年度の研究成果がまだ査読付き雑誌という形でとりまとめられていないため,論文としての形式でとりまとめる.さらに,研究計画の「課題D:日本及びフィリピンにおけるPPP 事業のリスク分担のあり方への提言」として,本研究課題の成果をとりまとめる.現在,共同研究を行っているフィリピン大学のチームとともに本の出版を行うべく取り組んでおり,平成31年度中には脱稿し,本研究課題の成果とする予定である.
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